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解析する場合、「力を電圧に置き換える機械系の等価回路」
の作法では、
L: 質量
C: スティフネス
R: 機械的粘性抵抗
という対応関係を使います。
この型式では、動電スピーカの機械系低域特性を単純化した
モデル(=質量-バネ-ダンパ系)に相当する等価回路は
V→
+−−L−−C−−R−−+
| |
電圧源 |
| |
+−−−−−−−−−−−+
(等倍フォントでないとずれるかも)
のように直列接続です。このモデリングでは、電圧源の
電圧が振動系に加わる「力」に対応し、またCに蓄積さ
れる電荷が変位に対応します。
#とりあえず機械的要素がどのように置き換え可能かを
#示すため、ボイスコイルの電気的要素は含めていません。
この等価回路と現実のアンプ-スピーカの対応を考えてみると、
現実のアンプ-スピーカでは、F=Bli (F, 力; B, ギャップ磁束
密度; l, ボイスコイル長; i, アンプの出力電流)の関係がある
ため、上記の等価回路で示されているV(このVは、等価回路での
仮想的な電圧=力)は、V=Bli(このiは現実のアンプ出力電流)と
いうことになります。
#実際のアンプ出力電圧・出力電流と、等価回路での仮想的な
#電圧・電流が一対一に対応しないので、混乱しないようご注
#意下さい。
これに対して、話の発端になっている
http://homepage3.nifty.com/y-daisan/html/SPEAKER.jpgは、力を電流に対応させるとともに、スピーカの入力端子から
みた「スピーカの電気的インピーダンス」を模擬する等価回路です。
この等価回路の場合、
力 :等価回路の回路電流
R (8 Ω): ボイスコイルのDCR
R+L (100 Ω+400 μH): ボイスコイルの高域インピーダンス
(渦電流損失により純粋なLとはならない)
C (222 μF): 振動系等価質量
L (71.3 mH): 支持系コンプライアンス
R (53.7 Ω): 支持系機械的粘性抵抗
にそれぞれ対応します(力を電圧で置き換えた場合とは
C, Lの役割が逆転することに注意)。
この等価回路の場合は、力が電流、速度がLCR並列共振回路
の端子電位差に対応し、スピーカの電気的インピーダンス
特性を比較的うまく表現してくれるので便利ですが、実際
のアンプ出力電流と完全に一対一で対応させるには、上記
のR, R+L(ボイスコイルの電気的特性)と LCR(支持系・振動
系の機械的特性に対応する電気的素子)の間にBl積:1の巻き
線比を持つ理想トランスを挿入し、F=Bliの関係を考慮して
やらねばなりません。
音圧が何に対応するかといえば、直接放射型スピーカの
十分に遠点での軸上音圧は振動板の加速度に比例し、また
上記のように振動系速度はLCR端子間電位差に対応すると
いうことから、音圧はLCR端子間電位差の時間微分に対応
ということになりますね。
なお、半無限空間(無限平面バッフル)に対する音響(放射)
インピーダンスは、大略10 Hzから10 kHz程度まではほぼ
純粋な質量負荷とみなせ、音響(放射)インピーダンスも
等価回路に含めるならば上記のLCR並列共振回路と並列に
接続される小容量のキャパシタということになりますが、
簡便なモデリングでは無視してしまうか、あるいは振動系
等価質量に対応するCに含めてしまい、air-massを含めた
振動系等価質量として考えることもしばしばです。
さらにキャビネットを等価回路に含めようとすると、平面
バフルもしくは密閉以外では少々複雑になりますし、密閉
の場合もキャビネット内部での音響的反射の影響がインピ
ーダンスの中域に現われ、かなりややこしいことになります。
#
http://homepage3.nifty.com/y-daisan/html/A40515.html#で観察されたインピーダンスの変化は、振動板前方の空間が
#有限となることおよび音響反射による影響で、ドライバを
#キャビに入れることによるfs近辺の特性変化・吸音材を入
#れないキャビで比較的明瞭にみられる中域でのインピー
#ダンスの乱れなどと基本的には同様な現象です。オカルト
#の要素はありません:)
個人的には、現実にある程度即したアンプの負荷としてシミ
ュレーション・計測を試みてみるなら、フルレンジもしくは
パッシブネットワークが介在しないマルチアンプ駆動に限られ、
またキャビの影響は含まれないものの、スピーカの入力端子
から見た電気的特性をシンプルながら比較的よく表現できる
http://homepage3.nifty.com/y-daisan/html/SPEAKER.jpgのモデリングから始めるのが妥当かな、と思います。ボイス
コイルDCRと高域インピーダンスの後に、Bl積:1に相当する
巻き線比のトランスを挿入して、電気磁気的要素と機械的要素
の関係をより忠実に表現できるシミュレーションを行なうこと
もできますが、とりあえずやってみたいのは、わりと現実に
即した負荷を使ってアンプ動作の解析をしたい、ということだと
思いますので御示しになった等価回路で構わないでしょう。
T/Sパラメータが公表されているドライバであればそれぞれ
相当する定数を求めることもできますので、ご希望があれば
少し整理してみますが、とりあえずはお手持ちのスピーカの
インピーダンスf特を実測してそれとわりにうまく合う定数を
使ってみるということでよいかと。