Evolve power amplifiers |
組立レポート |
エレキットTU-879R |
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このキットの実力がどの程度のものかを確かめるために、自己流に走るのを抑え愚直に説明書通りの組み立てを行い、その基本特性を測定して
みました。
組み立ては
説明書に必要な事柄が記載されているので、最初に一読して部品の確認と組み立て手順を把握し、組み立ての際に工程毎の説明を隅々までよく読んで取り掛かれば、大概は失敗なく作れる
でしょう。
しかし知識の乏しい初心者には説明を正しく理解できずに失敗する可能性がありそうで、難易度が高いと思います。
できうれば初心者向けにもっと気の利いた工夫をするべきではありますまいか。
★ 特性データ
このデータはあくまでも私が組み立てた1台の特性であって、全てのエレキットTU-879Rを代表する 特性でないことをお断わりしておきます。
■入出力特性
1kHz正弦波信号、8Ω抵抗負荷、ボリューム最大でRchを測定
オシロスコープで観測すると、出力波形のクリップが5Wを越えた位から始まります。
入力0.5Vで出力8Wに達しますが、波形は上下がクリップした台形です。
更にクリップさせて方形波にすると出力は10W程度となります。
■周波数特性
正弦波信号、8Ω抵抗負荷、ボリューム最大でRchを測定
1kHz,1V出力を0dBとしています。
綺麗なかまぼこ型です。
入力のカップリングコンデンサをパスした場合、20Hzで-3.6dBが-3.5dBになる程度の変化です。
低域は出力トランスのインダクタンスによるもので、 インダクタンスが大きければ平坦部分がもっと低い周波数域にまで広がるはずです。
段間のカップリングコンデンサ0.1μFの容量を増量しただけでは低域は変わりません。
逆に減らすと低域カットオフ周波数直前のレベルが上がり、低域の音量が増したように聴こえるでしょう。
これには出力管のカソードパスコンとの比率も影響していて、出力管のカソードパスコンを増やした場合でも同様になります。
現状よりも極端に段間のカップリングコンデンサの容量を減らしたり、出力管のカソードパスコンを増やしたりすると、低域カットオフ周波数の位相回転が大きくなって不安定になりなり発振します。
出力管のカソードパスコンを段間のカップリングコンデンサと同じ比率で増やすと良いが、そうしたことをしても、出力トランスのインダクタンスを増やさない限り、現状より低域カットオフ周波数は低くなりません。
オリジナルの定数は出力トランスのインダクタンスに合わせて上手く調整されているようです。
高域カットオフ周波数はNFBを安定に掛けるための位相補償コンデンサによるもので、位相補償コンデンサを取ると容量負荷で発振します。
■歪率特性
8Ω抵抗負荷、ボリューム最大でRchを測定
歪の主体は第2高調波成分です。
1kHzよりも100Hzで歪が大きいのは、出力トランスのインダクタンスで低域が、また10kHzで歪が大きいのは、位相補償コンデンサで高域が、それぞれオープンループゲインの低下によるためと思われます。
■出力インピーダンス特性
6〜16Ω端子を8Ω抵抗負荷オン・オフ法でRchを測定
30kHzにピークを生じてます。これは出力トランスの特性が原因かも知れません。
可聴帯域内は4Ω程度ですから、8Ωのスピーカに対するDF(ダンピングファクタ)は2。
■残留ノイズ
残留ノイズはボリューム最小、8Ω抵抗負荷で測定
Rch/230μV 38μV(JIS-A)
Lch/130μV 26μV(JIS-A)
出力管の6L6GCを左右入れ替えるとRchのノイズレベルが400μV以上になりました。
このような確認ができるのは測定器が整っていることの強みであり、小さな音なので普通に耳で聴いても判然としないでしょう。
2本の6L6GCを見比べるとベースキーの方向と電極の向きにズレがあり、それが原因かをソケットを回転して確かめたいが、プリント基板に取り付いてるのでどうにもなりませんです。
★ 総合評価
意識して聴くとDFが低いためのフワフワ感が、そういう音が好みの人には宜しいかと思います。
アンプの出力インピーダンスとスピーカーのインピーダンス特性とが相まって低音に膨らみを与え、アンプの周波数特性はカップリングコンデンサで低域ゲインを下げているため、それらが程好く絶妙に作用した場合、これぞ真空管アンプのいい音と感じられるのでしょう。
特筆すべきはノイズの少なさです。初めに音出しした時は台風の接近していた日で、雨音にマスクされてノイズ音を聴くことができませんでした。
雨が止んでから改めて確認すると、スピーカに耳をくっ付けるくらいにしないと聴こえないノイズ音です。しかも電源トランスの鳴きがありません。
たまたまストックに6L6Gがあったので差し替えて見ました。
キットに付属の6L6GCは可愛いくせに30Wのプレート損失があり、6L6Gはバルブサイズが大きいのにプレート損失が19Wしかない、でもこのアンプでは定格内で使えるので交換してみましたけど、まあ私ごとき耳にその音の差はさっぱり判らないということがはっきり判り
、アンプの評価より私自身の評価が問題となりそうなので、これ以上の感想を述べるのはやめます。
2006/06/05