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2SJ554/2SK2955 A級動作 シングル・エンデッド・プッシュプル・パワーアンプ
出力段は、フローティング電源で動作する低オン抵抗コンプリメンタリーMOS-FET
2SJ554/2SK2955を、アイドリング電流5Aで用いたA級シングルエンデッ
ドプッシュプルソースフォロワー回路であり、そのフローティング電源は2SJ200/2SK1529による、B級シングルエンデッ
ドプッシュプルソースフォロワー回路によって、出力電圧と等振幅の対アース電圧で振ります。
簡単に云えば、A級アンプの電源をB級アンプが抱きかかえて出力電圧に合せて上下してやる方式です。
この方式では、信号電圧に対する応答がA級アンプよりB級アンプの方が速い必要がありますが、2SJ554/2SK2955よりも2SJ200/2SK1529は入力容量が少ないので、その条件を満たすことができます。
高速の2SJ200/2SK1529によるB級アンプだけでも良いではないかと思うかも知れませんが、2SJ554/2SK2955はドレイン・ソースオン抵抗が非常に低く、また順伝達アドミタンスが高いため、大電流動作時の歪みの発生が少なく、低インピーダンス・スピーカーの駆動に適していて、この点では2SJ200/2SK1529に勝っています。
A級アンプの電源をB級アンプが抱きかかえて出力電圧に合せて上下させることによって、A級アンプはB級アンプの出力に対してだけの動作となるため、対アースの大きな電圧振幅を相手にするよりも動作が高速となります。
A級アンプとB級アンプの入力電圧の差はA級アンプのドレイン・ソース間電圧の変化となりますから、その差が少ないほどA級アンプのフローティング電源電圧を低くすることができます。
実際にフローティング電源電圧は2V〜3V程度で足りるので、A級アンプは5A〜10A程度のアイドリング電流が可能となり、純A級で大出力域まで動作します。
完璧で最高なつもりが、いろいろ試してみると、実は大したことがないと云うことは良くあることで、この回路も、カスコード段B級アンプのアイドリング電流を減らすと、低負荷インピーダンスで大出力時に歪み率の悪化が見られました。
これはカスコード段B級アンプのMOS-FETのgmが低いため、出力段A級アンプのドレイン-ソース間電圧を圧迫してしまうことが原因です。
出力段A級アンプの電源電圧を少し高くすれば改善されますが、その分、出力段A級アンプのアイドリング電流を減らさないとドレイン損失が大きくなります。
カスコード段B級アンプのMOS-FETを並列接続してgmを上げる事でも改善できるでしょう。カスコード段B級アンプをボルテージミラー方式にすることでも行けると思います。
しかしこの方式の最大の売りは、カスコード段B級アンプの特性に影響されず、出力段A級アンプの質が維持できる事なのですが、それを低負荷インピーダンスで大出力時まで実現するには、相当の物量を投入しなければならない事が見えてきて、この方式をこれ以上追求することの興味が薄れてきました。
代わって私の心を捕らえたのが2SJ554/2SK2955の素性の良さです。オン抵抗が非常に低いにも関わらず、電極間容量が従来のこの種のMOS-FETに比べて小さく、2SJ200/2SK1529と置き換えても高域特性の差はほとんどありません。むしろ低負荷インピーダンス大出力時では低歪みでした。
ただ、ドレイン耐圧が低く電源電圧を±30V以下にしなければなりませんから、大出力は望めませんが。
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最終更新日2000/04/23 11:33:24 +0900