Evolve power amplifiers |
<企図><回路><基板><ケース><部品表><写真集><調整法><測定結果>
EL34 PP
超3極管接続
パワーアンプの製作
EL34プッシュプルで余裕の25W+25W
超3極管接続Ver.1全段DC結合
半導体と真空管のハイブリッドアンプ
SN比109dB(A)のローノイズ
電源ドリフトキャンセル回路で安定動作
高性能オーディオ用Rコアトランス採用
DCバランスサーボで出力トランスのアンバランス電流解消超3極管接続プッシュプルアンプは以前にもEL34を使って超3極管接続Ver.5で製作しましたが、その時は直流的な動作点を安定にすることが難しかったために全段をDC結合にすることを諦めてCRによるAC結合としていました。
しかし真空管アンプの世界にも21世紀が訪れ、再び新たな展開が始まろうとしています。
電源電圧変動をキャンセルする信号を加えたバイアス回路が全段DC結合でも直流的に安定な動作を可能にしたのです。
再度EL34を使い、超3極管接続Ver.1による全段DC結合プッシュプルアンプの製作に挑戦します。
超3極管接続Ver.1では出力管のgmが高いほど出力インピーダンスを下げることができます。出力管のgmは出力管のプレート電流が大きいほど高くなりますが、プレート損失の制限があるため
にプレート電流を大きくした分だけ代わりにプレート電圧を下げなければなりません。プッシュプルアンプではプレート電圧を高くするほど最大出力を大きくできるので、最大出力の大きさを取るか、出力インピーダンスの低さを取るか
で選択に迷いま
した。
因みに
最大出力はプレート電圧が250Vでは10W程度、300Vでは20W程度、350Vでは30W程度となります。また出力トランスの1次側インピーダンスが違っても(2.5kΩと5kΩ)出力
に大差ありません。
プレート電源に使う電解コンデンサーには耐圧が250V、350V、400V、500Vのものがあるので、350Vか400Vのものを使うことにして、プレート電圧を330V程度に決め、最大出力が25W程度のアンプとすることにしました。
プレート電流はプレート損失の最大定格25Wに納まる上限の70mAで設計しますが、音を聴いて許せるなら50mA以下に減らし、ロングライフに耐えるようしたいと思います。
真空管の選定
EL34は現在最もポピュラーな出力管で新旧各社のものがありますが、特性が安定していてばらつきの少ないものを選択すべきです。ペア組で販売されているものが理想です。
本機が採用したSvetlana(スヴェトラーナ)EL34はお洒落な茶色ベースに透明度の高いガラスの綺麗さと、現行品であるためスペアに不自由しないだろうことが決定の理由です。
6SN7GTBは6SN7GTの最大プレート電圧を300V→450V、最大プレート損失を2.5W→5Wに強化した球です。外観からはどれがよいか見当が付かず、RAM管のように厳選されたものでない限り当たり外れはありますが、使って試して選ぶしか道はありません。
各社のものを取り混ぜて10本ほど入手した中で、幸いRCAの2本が比較的にローノイズで、ユニット間のバランスもよかったので採用しました。不採用にした球のノイズは50μV程度でしたから、無選別でもそこそこはローノイズにできると思います。
出力トランスの選定
出力25Wクラスに使える出力トランスは数多くありますが、物珍しさからRコアに巻かれたソフトンRX-40-5を採用しました。
同じRコア出力トランスで以前使用したシングル用RW-20が素直な特性でしたので、PP仕様のこのトランスも素直な特性を期待しての採用です。
同クラスの出力トランスに比較してコンパクトで軽量に仕上がっています。
シャーシ内部に収めるため、写真のようにトランスのカバーを外したむき出しの状態で取り付けます。
メジャーループNFB
アンプのゲインに余裕があるので、出力トランスの2次側からアンプの初段に6dB程度のメジャーループNFBを掛けることを検討しました。
NFBよって出力インピーダンスを下げ、歪を減らすことができますが出力トランスの周波数特性に阻まれ
、高い周波数まで安定にNFBを掛けることは困難であり、危険と判断しました。
メジャーループNFBがなくても、
出力インピーダンスは1Ω程度ですから、むしろ音が硬くならず真空管アンプらしい聴き心地が得られます。また歪も波形が酷いものでなければ私の耳では分らないので構わないこととします。
バラックセットで回路を模索中
実験に利用しているケースは一度作りかけたタカチMB-8で、加工に失敗して再利用してます。
アンプ部分 電源部分 |
B電源のコンデンサーは220μFが1個だけでもノイズは30μV台にできますがスペースに余裕があったので2個取り付けました。
電源トランスのB電源巻線の直流抵抗が10Ω程度なので、突入電流は最大33Aで、3TH62の最大ピーク電流は60Aですから大丈夫と思います。
アンプ基板 電源基板 |
銅箔パターン面に部品を取付ています。銅箔パターンのピッチが狭いため、絶縁距離が保てなくなることを警戒してこのようにしています。
また部品配置においても電圧差の高い部分では充分な絶縁距離が確保できるように考慮したつもりです。
2SK389と2SC3381の4番ピン(サブストレート)は不要ですのでニッパで根元から切断します。
製作した基板を実験機でテスト中
シャーシにタカチのOSケースを使い、電源トランスと出力トランスのコアの中心軸が一致する配置にして、電源トランスから発生する磁気ノイズが出力トランスに与える影響を減らしました。
電源トランスは出力トランスと高さを合すために、ゴム板とソルボセインによる12.5mmの下駄を履かせます。
基板の取付はシャーシ内部がスペース的に苦しいため、シャーシ上に出しました。
部品名 | 型番 | 仕様 | メーカー | 個数 | 単価 | 金額 | 入手先 |
真空管 | EL34 | MP | Svetlsna | 2 | \ 4,000 | \ 8,000 | TUBE商会 |
真空管 | 6SN7GTB | RCA | 2 | \ 2,800 | \ 5,600 | イシノラボ | |
FET | 2SK389 | BL | TOSHIBA | 2 | \ 130 | \ 260 | サトー電気 |
トランジスター | 2SC3381 | GR | TOSHIBA | 2 | \ 90 | \ 360 | サトー電気 |
トランジスター | 2SC1775A | E | HITICHI | 2 | \ 25 | \ 50 | サトー電気 |
トランジスター | 2SB648A | HITICHI | 6 | \ 70 | \ 420 | サトー電気 | |
トランジスター | 2SD668A | HITICHI | 4 | \ 60 | \ 240 | サトー電気 | |
ダイオード | 3TH62 | TOSHIBA | 4 | \ 250 | \ 1,000 | 若松通商 | |
ダイオード | 10DF4 | 日本インター | 4 | \ 120 | \ 480 | 若松通商 | |
緑色LED | TLUG163 | 3φ | TOSHIBA | 2 | \ 40 | \ 80 | サトー電気 |
抵抗 | 5W 470Ω | 酸金 | 2 | \ 55 | \ 110 | サトー電気 | |
抵抗 | 1W 470kΩ | 酸金 | 4 | \ 30 | \ 120 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/2W1.5MΩ | カーボン | 2 | \ 10 | \ 20 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/4W 2Ω | カーボン | 4 | \ 10 | \ 40 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/4W 5.6kΩ | カーボン | 4 | \ 10 | \ 40 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/4W 36kΩ | カーボン | 2 | \ 10 | \ 20 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/4W 5.1kΩ | カーボン | 4 | \ 10 | \ 40 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/4W 220kΩ | カーボン | 2 | \ 10 | \ 20 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/4W 2.7kΩ | カーボン | 4 | \ 10 | \ 40 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/4W 27kΩ | カーボン | 2 | \ 10 | \ 20 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/4W 3.6kΩ | カーボン | 2 | \ 10 | \ 20 | サトー電気 | |
抵抗 | 1/4W 100Ω | カーボン | 4 | \ 10 | \ 40 | サトー電気 | |
半固定抵抗 | 20Ω | CT-6P 20 | コパル電子 | 2 | \ 700 | \ 1,400 | エリスショップ |
半固定抵抗 | 100Ω | 6φサーメット | 2 | \ 240 | \ 480 | アルプス無線 | |
半固定抵抗 | 10kΩ | 6φサーメット | 2 | \ 240 | \ 480 | アルプス無線 | |
コンデンサー | 630V 0.1μF | MKP QS | AUDYN CAP | 2 | \ 450 | \ 900 | テクニカルサンヨー |
コンデンサー | 6.3V 470μF | 無極性電解 | BlackGateNX | 2 | \ 1,100 | \ 2,200 | 若松通商 |
コンデンサー | 400V 220μF | 電解 | 特価品 | 2 | \ 400 | \ 800 | 藤商電子 |
コンデンサー | 160V 220μF | 電解 | 1 | \ 360 | \ 360 | サトー電気 | |
コンデンサー | 50V 470μF | 電解 | ELNA ARE | 1 | \ 280 | \ 280 | 若松通商 |
出力トランス | RX-40-5 | P5kΩ:S6Ω | ソフトン | 2 | \ 9,800 | \ 19,600 | ソフトン |
電源トランス | RA200-006 | 特注 | フェニックス | 1 | \ 13,400 | \ 13,400 | フェニックス |
ケース | OS99-20-33BX | W200×H99×D330 | タカチ | 1 | \ 8,662 | \ 8,662 | テクニカルサンヨー |
アルミアングル | 3t× 20×40 | 長さ300mm | 2 | \ 310 | \ 620 | 林友ホームセンター | |
アルミ板 | 2t× 200×300 | 1 | \ 960 | \ 960 | 林友ホームセンター | ||
子ねじセット | M3×10 | 38セット入り | 1 | \ 400 | \ 400 | 林友ホームセンター | |
スペーサー | M3×10 | ジュラコン 片側メス | 12 | \ 35 | \ 420 | アルプス無線 | |
基板 | ICB-293G | 1.2t×72×95 | サンハヤト | 1 | \ 300 | \ 300 | アルプス無線 |
基板 | CB-288G | 1.2t×47×72 | サンハヤト | 2 | \ 135 | \ 270 | アルプス無線 |
真空管ソケット | 8Pオクタル | タイト | 6 | \ 400 | \ 2,400 | サトー電気 | |
ACインレット | 1 | \ 510 | \ 510 | 小柳出電気商会 | |||
ヒューズホルダー | FH001 | 250V15A |
EDK |
1 | \ 100 | \ 100 | サトー電気 |
ヒューズ |
250V |
6.3X30L |
1 | \ 50 | \ 50 | サトー電気 | |
RCAジャック | J102 | スーパートロン | 2 | \ 600 | \ 1,200 | テクニカルサンヨー | |
出力ターミナル | CU-T80 | 赤黒ペア | トリテック | 2 | \ 2,070 | \ 4,140 | テクニカルサンヨー |
配線材 | 30芯 | 6色2.5m | ダイエイ電線 | 1 | \ 500 | \ 500 | テクニカルサンヨー |
配線材 | 20芯 | 6色2.5m | ダイエイ電線 | 1 | \ 600 | \ 600 | テクニカルサンヨー |
配線材 | 2520 | シールド線 @1m | モガミ | 1 | \ 250 | \ 250 | 小柳出電気商会 |
価格は日々変わり、また現在取り扱われてない場合もありますので、あくまでも参考値です。
完成した基板
上パネルの裏側
配線前のシャーシ内部
上パネルに基板が載る
カバーを付けて完成
カバーを6SN7の部分でアーチに切り欠いた所がデザインのアクセント
フロントビュー
レタリングの文字は光線の加減で見えたり見えなかったりする。
実はインスタントレタリングで文字を入れクリヤーラッカーを上からスプレーしたが定着しなくて一部剥げてしまったために、やり直すつもりで粘着テープで全部剥ぎ取ったら文字の跡が綺麗に残ったという偶然の産物です。
バーズアイビュー
正面
背面
セクシーショット
おっぴろげ
基板と電源トランスの距離が近いため、電源トランスの上に珪素鋼板を貼り付けて磁気シールドしました。その上の黒いものはゴム板で配線が電源トランスの巻線に接近するのを防ぐためと、磁歪振動で鳴くのを抑えるためです。
上パネルを閉じる時に、出力トランスからの配線を電源トランスに接近させないように、上手く配線を折り畳まなければなりません。
初めにVR1とVR2は中央に、VR3は左に回し抵抗を最大にしておきます。
入力端子に発信器からサイン波1kHz100mV程度を与え、出力端子に8Ωダミーロードを接続して、出力電圧をオシロスコープとミリボルトメーターで観測できるようにします。
基板のチェック端子TP0とTP1またはTP2に電圧計を接続、TP1とTP2に電圧計を接続、それと各電源電圧が監視できるように電圧計を接続しておきます。
テスター1台だけの場合は、始めに-40V電源の確認をしてすぐ電源を切り、次に100V電源の確認をしてすぐ電源を切り、次に430V電源の確認をしてすぐ電源を切り、次にTP0とTP1またはTP2の電圧を調整して、次にTP1とTP2の電圧を調整します。
慎重に行うなら真空管のヒーターだけ別電源で点火して、スライダックを使って徐々に様子を見ながら電圧を上げるべきですが、今回は基板をバラックセットでテスト済みなので、配線に間違いがないことを確認した後、一気に通電しました。
各電源電圧を確認したら、VR3を徐々に回してTP0とTP1またはTP2の電圧を150mV程度にします。
カソード電流は計算によって150mV/2Ω=75mAとなります。スクリーングリッド電流は5W470Ω両端の電圧を測定すると約9Vだったので、(9V/470Ω)/2=9.6mAだから、プレート電流は75mA-9.6mA=65.4mAとなります.。
この時、オシロスコープに出力波形が確認できたら入力信号を0にします。
次にVR1でTP1とTP2の電圧を0Vにします。
アンバランス電流Iubは、TP1-TP2間の電圧をVubとすると、Iub=Vub/4Ωで計算できる。Iubを1mA以下とするには、Vubを4mV以下にまで調整する必要があります。
次にVR2で出力のノイズ電圧を最小にします。
この時、ミリボルトメーターの出力をオシロスコープにつないで、AC電源周波数をトリガーにし、波形を見て行うと調整し易いです。
再度VR1でTP1とTP2の電圧を0Vに、VR3でTP0とTP1またはTP2の電圧を150mV程度に再調整します。
150mV程度というのは、電源電圧の変動や素子の温度変化や真空管の電極の熱膨張などによって
変動しますが、数%程度なら許容できる範囲なので問題ありません。
最後に、30分置きに2時間ほど様子をみます。
下図のような、調整要領を印刷したシールを、ケースのフタの内側にでも貼っておけば便利です。
入出力特性(1kHz)
波形で見ると出力22W位から上下のクリップが始まり、24Wではクリップがはっきり解り、30Wでは台形波です。
でも特性図で見ると30Wよりまだ上まで行けそうですね。
出力30Wの波形
周波数特性(0dB=1.25W,1kHz)
340kHz近辺にピークがあり出力トランス2次側からメジャーループのNFBを安定に掛けることは困難です。
高域の周波数特性が-3dBに低下する周波数fHは160kHzと広帯域です。
低域は10Hzでもフラットですが、10Hzの波形はコアの飽和で少し崩れていました。
20Hz方形波波形(V:1V/DIV,H:10ms/DIV)
サグがおよそ0.2/3=0.067であるため、低域の周波数特性が-3dBに低下する周波数fLは、
fL=0.39×20×0.067=0.52 [Hz]と推定されます。
fLは出力トランスのアンバランス電流なくすために設けたDCバランスサーボの周波数特性で決まります。
ただ、出力トランスが40W/40Hzの容量であるため、通過容量は周波数の2乗に反比例するので、0.52Hzでは容量が40W/5917=0.007Wとなり、最大出力の方が非常に小さくなってしまいます。
歪率特性
歪はこんなもんです。2次歪、3次歪とも均等に含まれています。
試作で6FQ7を使った時にはこの半分程度の歪率でしたから、歪率は6SN7GTBの特性に大きく依存していると思われます。
1kHz,1W,THD=0.1%の出力と歪の波形
ダンピング・ファクター(RL=8Ω)と出力インピーダンス
2kHz以下の出力インピーダンスは約1Ω一定です。
1次側P-P間直流抵抗は128Ω程度ですから2次側から見ると約0.15Ωであり、出力トランス2次側の直流抵抗が0.4Ω程度ですから、出力インピーダンスが1Ωであるならば、残りの0.45Ωを1次側インピーダンスに換算すると375Ω、これが出力管2本の等価内部抵抗+出力トランスの伝達損失分ですから、出力管1本当りの等価内部抵抗は187.5Ω以下と考えられます。
SN比
雑音電圧は入力ショート、出力8Ω抵抗負荷で測定して、
Rチャンネルが40μV、聴感補正フィルター使用で10μV、
Lチャンネルが30μV、聴感補正フィルター使用で9μVでしたから、
出力1W(2.82V/8Ω)に対するSN比は、
Rチャンネルが97dB、聴感補正フィルター使用で107dB、
Lチャンネルが99.5dB、聴感補正フィルター使用で109.9dBとなります。
最大出力25W(14V/8Ω)に対するSN比では130dB以上となります。
このノイズはスピーカーに頭を近づけ耳をそばだてて聴こえる程度です。
しかしこんな微小な出力に反応するスピーカーも凄いと逆の感動をしてしまいました。
30μVのノイズ波形(水平軸2mS/DIV)
10kHz方形波写真(垂直軸1V/DIV)
8Ω負荷
340kHz近辺のピークのため僅かにオーバーシュート、リンギングが出ます。
8Ω//0.1μF負荷
8Ω//0.47μF負荷
無負荷
0.1μF負荷
0.47μF負荷
容量負荷による発振は起こらないようなので、安心して使うことができます。
DSOによる観測
DSO(デジタル・ストレージ・オシロスコープ)を使って出力管の電流変化を記録しました。
電源投入時からの電流変化
電源投入時からの
TP0-TP1間電圧です。
縦軸1目盛50mV、横軸1目盛50秒となっています。
左端が電源投入時点で、右端が500秒(8分20秒)経過点です。
上のラインが中央の横軸を0にしたLchの電圧、下のラインが最下の横軸を0にしたRchの電圧で、それを2Ωで割った値がEL34のカソード電流となります。
入力をショートした無信号状態のデータです。
ノイズが乗っているように見えますが、DSOの特性によるもので、実際の測定電圧にノイズはありません。
AC電源は測定前にスライダックで100Vに設定して安定化はしていませんので、測定中に98V〜102Vの範囲で変動がありました。
カソード電流に目だった変動傾向はなくほぼ一定な状態です。
電源投入時点を拡大
上のデータの横軸1目盛を5秒に切り替えて電源投入時点を拡大表示したものです。
電源投入から約15秒で真空管がウォームアップして電流が流れ始め、40秒後にはほぼ定常状態に達しています。
電源変動に対する電流変化
電源電圧を変化させて、電源電圧変動に対するEL34の動作電流の変化を観測
しました。
上のラインが中央の横軸を0にしたEL34のB電源電圧で、縦軸1目盛が100Vです。
B電源電圧とは回路図にある100Vと430Vのバスライン間の電圧で、320V+5%-10%の範囲で変化させました。
下のラインは最下の横軸を0にした
TP0-TP1間の電圧で、縦軸1目盛が50mVです。
横軸1目盛50秒で、左端で電源投入して、右端の500秒(8分20秒)経過点10秒前に電源オフしています。
入力はショートした無信号のデータです。
電源電圧の緩やかな変化には電流もスムースに変化しますが、
急峻で大きなステップ状の変化には大きな電流変化が過渡的に発生します。
その変化の方向は電源電圧が上昇した時には電流が減少し、電源電圧が下降した時には電流が増加します。
これは電源電圧変動に伴うカソード・エミッションの変化も含めた変化量に対応した設定にしてあるためで、カソード・エミッションの変化が追いつかない急峻な電源電圧変動に対しては過剰に反応してしまうわけです。
これを防ぐにはB電源電圧に急峻な変化が生じないようにするか、ヒーター電源を安定化することで対策できます。
ただしそこまでしなくても、電流変化はプッシュプルの出力管に同相で起きるため、この電流変化に伴うノイズが出力に発生することはなく、実用上は支障ありません。
等価的なプレート内部抵抗が桁違いに低い超3極管接続の動作電流を、電源電圧変動に対してほとんど変化しな
くできたので、十分満足すべき結果です。
アンバランス電流
TP1-TP2間の電圧を電源投入時から記録しました。
プローブの倍率を1桁低くしてあるので縦軸1目盛5mVです。
横軸1目盛50秒となっています。左端が電源投入時点で、右端が500秒(8分20秒)経過点です。
変動幅はプラスマイナス1mV(0.25mA)以内に収まっています。
いくらDC電流に敏感なRコアトランスでも、これだけ少なければ影響ないでしょう。
最後に
「氷炭は言わずして冷熱自ずから明らかなり」、音の良し悪しを語る必要があるでしょうか。
後で気づいたことですが、電源トランスのヒーター巻線の電流容量は3.6A必要です。現状でもRコアトランスに余裕があるためか特に問題ない様子ですが、このページを参考に製作される場合は電源トランスのヒーター巻線の電流は3.6A以上のものを使用してください。
またレギュレーションの良い電源トランスの場合は電源投入時の突入電流が大きいため、ヒューズが2Aでは切れることがありますので、その時は3Aのヒューズを使用してください。
最終更新日 2006/06/05