Evolve power amplifiers 

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ラジオ技術2000年7月号 野呂伸一 氏発表による
D-NFB
のシミュレーション

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D-NFBの基本構成の動作を表計算ソフトのエクセルを使ってシミュレーションしてみたところ、終段ゲインが理想状態の2倍以上になると発振すること、初段のゲインと初段の正帰還率が正確に合 っていないと歪打消し動作しないこと等、押さえるべきポイントが分かって来ました。

私が作成したシミュレーションのファイルは、ここdnfb.xls)をクリックするとダウンロードできます。
ただし、Microsoft Excel 2000で作成しましたので、Excelの下位バージョンではファイルが正しく開かないかも知れません。

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表計算ソフトがあれば簡単にシミュレーションファイルを作成できるので、そのやり方を説明いたします。
ここではMicrosoft Excelを使ってますが、Microsoft Excel以外の表計算ソフトでも同様の機能であるため、これと同じ手順で作成できると思います。
表計算ソフトの初歩的な機能だけで作成してますが、表計算ソフトの使用方法で分からない部分は参考書などで勉強してください。

ワークシートの各セルに、下に示す基本構成の動作を表す数式を入れると、そこにシミュレーションされたデータが得られます。さらに、データをグラフ化するとビジュアル感覚で動作概要を知ることができます。

D-NFBの基本構成

回路の動作

e = -V1・α+Vo・β
 -V1 = (e-Vin)A
Vo = G・V1+D

まず適当なセルに下に示す項目と、その隣のセルに取りあえず下に示す数値を入れます。この例では項目がワークシートのB列、数値はC列の14行目のセルから順に下へ入れてあります。

入力電圧 Vin 1
初段ゲイン A 20
終段ゲイン G 20
歪電圧 D 0
初段帰還率α 0.05
終段帰還率β 0.0025

αの理想値は1/Aであり、βの理想値は1/(A・G)であるため、上の数値は、その理想値にしてあります。
この理想値は適当なセルに下に示すような数式を入れることで、そのセルに理想値が表示されます。

αの理想値 =1/$C$15
βの理想値 =1/($C$15*$C$16)

$C$15は、初段ゲインAの数値がワークシートのC列15行目のセルに入れてあるためで、$C$16は、終段ゲインGの数値がC列16行目のセルに入れてあるためです。

さて、以上の設定で入力電圧Vinと歪電圧Dが印加されると、初段の出力電圧-V1と終段の出力電圧Voに応じた歪打消し電圧eが発生します。
そしてこのeが初段に印加されるので-V1とVoが変化してeもまた変化します。
そしてまたこのeが初段に印加されるという具合に、その動作を延々と繰り返すわけです。
そこでこの動作に沿ったデータを展開すれば、D-NFBの動作を見ることができます。

まず下に示す表のように、セルに文字と数式を入れます。
この例では先頭の循環数の文字の入っているセルは、ワークシートのC列22行目です。

循環数 -V1 Vo e
0    

0

1 =(F23-$C$14)*$C$15 =-$C$16*D24+$C$17 =D24*$C$18+E24*$C$19

シミュレーションが始まる前の状態を循環数の0番目とし、eは任意の値を入力できるようにしました。
循環数の1番目で入力項目で設定された各データを読み込み、回路の動作に基づいた-V1、Vo、eの各計算結果を表示するようにしています。

F23はF列23行目にある循環数0番目のeの値が入っているセルです。$C$14は入力電圧Vinの値が入っているセルです。$C$15は初段ゲインAの値が入っているセルです。
$C$16は終段ゲインGの値が入っているセルです。D24は循環数1番目の-V1の値が入っているセルです。$C$17は歪電圧Dの値が入っているセルです。
$C$18は初段帰還率αの値が入っているセルです。E24は循環数1番目のVoの値が入っているセルです。$C$19は終段帰還率βの値が入っているセルです。

循環数の2番目以降は以下のようにします。

循環数 -V1 Vo e
0    

0

1 =(F23-$C$14)*$C$15 =-$C$16*D24+$C$17 =D24*$C$18+E24*$C$19
2 =(F24-$C$14)*$C$15 =-$C$16*D25+$C$17 =D25*$C$18+E25*$C$19
3 =(F25-$C$14)*$C$15 =-$C$16*D26+$C$17 =D26*$C$18+E26*$C$19
4 =(F26-$C$14)*$C$15 =-$C$16*D27+$C$17 =D26*$C$18+E27*$C$19
5 =(F27-$C$14)*$C$15 =-$C$16*D28+$C$17 =D26*$C$18+E28*$C$19
6 =(F28-$C$14)*$C$15 =-$C$16*D29+$C$17 =D26*$C$18+E29*$C$19

循環数が1つ増える毎に、$の付いてないセルの行番号を1つづつ増やしていけばよいわけで、この調子で循環数の50番目まで表を作成します。もっと先が見たければ循環数をさらに追加して行けばよいです。この作業にExcelのオートフィルという機能を使用すると簡単にできます。

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  1. 理想状態で歪電圧0の場合
入力電圧 Vin 1
初段ゲイン A 20
終段ゲイン G 20
歪電圧 D 0
初段帰還率α 0.05
終段帰還率β 0.0025

入力項目の数値が上の様になっている場合は、シミュレーションの表には以下のように数値が表示されます。

循環数  -V1 Vo e
0     0
1 -20 400 0
2 -20 400 0
3 -20 400 0
4

これ以降同じ

初段でVinの1が極性反転されて20倍されるので、-V1は-20となり、これが終段で極性反転されて20倍されるので、Voは400となります。歪電圧Dが0で初段帰還率αと終段帰還率βは理想値であるためeは0となっています。

  1. 理想状態で歪電圧がある場合
入力電圧 Vin 1
初段ゲイン A 20
終段ゲイン G 20
歪電圧 D
初段帰還率α 0.05
終段帰還率β 0.0025

入力項目の数値で歪電圧Dを1とした場合は、シミュレーションの表には以下のように数値が表示されます。

循環数  -V1 Vo e
0     0
1 -20 401 0.0025
2 -19.95 400 0.0025
3 -19.95 400 0.0025
4

これ以降同じ

循環数1の時、歪電圧Dの1が加わるのでVoは401となりeが0.0025発生します。
このため循環数2の時-V1は-19.95になりVoは400と、歪の無い場合と同じ電圧に戻ります。

  1. 終段ゲインのみ低下した場合
入力電圧 Vin 1
初段ゲイン A 20
終段ゲイン G 19
歪 電圧 D 0
初段帰還率α 0.05
終段帰還率β 0.0025

入力項目の数値で終段ゲインGを19とし、終段帰還率βが理想値でない場合は、シミュレーションの表には以下のように数値が表示されます。

循環数  -V1 Vo e
1 -20 380 -0.05
2 -21 399 -0.0525
3 -21.05 399.95 -0.05263
4 -21.0525 399.9975 -0.05263
5 -21.0526 399.9999 -0.05263
6 -21.0526 400 -0.05
7 -21.0526 400 -0.05
8

これ以降同じ

循環数1のVoは380であるためeが-0.05となり、循環数2で-V1が-21に上昇するのでVoは399となります。さらに何度も循環を繰り返すことで、歪の無い場合と同じ電圧になります。

  1. 終段ゲインが上昇した場合
入力電圧 Vin 1
初段ゲイン A 20
終段ゲイン G 25
歪 電圧 D 0
初段帰還率α 0.05
終段帰還率β 0.0025

入力項目の数値で 終段ゲインGを25とし、終段帰還率βが理想値ではない場合は、以下のように表示されます。

循環数  -V1 Vo e
0     0
1 -20 500 0.25
2 -15 375 0.1875
3 -16.25 406.25 0.203125
4 -15.9375 398.4375 0.199219
5 -16.0156 400.3906 0.200195
6 -15.9961 399.9023 0.199951
7 -16.001 400.0244 0.200012
8 -15.9998 399.9939 0.199997
9 -16.0001 400.0015 0.200001
10 -16 399.9996 0.2
11 -16 400.0001 0.2
12 -16 400 0.2
13 -16 400 0.2
14

これ以降同じ

循環数1でVoは500となるためeが0.25となり、循環数2で-V1が-15となりVoが375と過剰に減少してしまいます。循環数3でVoは406と少し過大になり、循環数4でVoは398と少し過小になり、こうして循環を繰り返す度に歪の無い場合と同じ電圧に近づいていきます。

  1. 終段ゲインが2倍に上昇した場合
終段ゲインGを2倍の40として、終段帰還率βが理想値の2倍になっている状態では、以下のようになります。
循環数  -V1 Vo e
0     0
1 -20 800 1
2 0 0 0
3 -20 800 1
4 0 0 0
5 -20 800 1
6 0 0 0
7

これ以降も同じ繰り返し

循環数1でVoは800となるためeが1となり、入力電圧Vinの1と等しくなるため、循環数2で-V1が0になりVoが0になってしまいます。このときeは0となるため、循環数3でVoは800となりeが1となり、循環数4で再びVoが0になりと、循環数の奇数番目でVo=800、偶数番目でVo=0を繰り返す間欠的な増幅状態となります。

  1. 初段ゲインが減少して歪電圧がない場合

初段ゲインAを18として、初段帰還率αと終段帰還率βが理想値でない状態で、歪電圧がない場合は、以下のようになります。

循環数  -V1 Vo e
0     0
1 -18 360 0
2 -18 360 0
3 -18 360 0
4

これ以降同じ

循環数1で-V1が-18となるためVoは360となり、eは0であるため以降変化がありません。これだけでは単にアンプのトータルゲインが減っただけのようですが、歪電圧が加わった場合に果たしてどうなるかが見物です。

  1. 初段ゲインが減少して歪電圧がある場合

上記の状態で歪電圧Dを1とした場合は、以下のようになります。

循環数  -V1 Vo e
0     0
1 -18 361 0.0025
2 -17.955 360.1 0.0025
3 -17.955 360.1 0.0025
4

これ以降同じ

循環数1で歪電圧Dの1が加わることでVoが361となり、eは0.0025になります。このため循環数2でVoは360.1となりDを完全に打ち消すことができません。

  1. 初段ゲインが上昇した状態で終段ゲインが低下した場合
入力電圧 Vin 1
初段ゲイン A 25
終段ゲイン G 4
歪 電圧 D 0
初段帰還率α 0.05
終段帰還率β 0.0025

上のように初段ゲインを25とし、終段ゲインを4とした場合は、以下のようになります。

循環数  -V1 Vo e
0     0
1 -25 100 -1
2 -50 200 -2
3 -75 300 -3
4 -100 400 -4
5 -125 500 -5
6 -150 600 -6
7 -175 700 -7
8 -200 800 -8
9 -225 900 -9
10 -250 1000 -10
11

以降同比率で増加する

循環数1でeが丁度1になり、循環数2でeが丁度2になるという具合に、循環するごとに-V1、Vo、eが直線的に際限なく増加して行きます。
実際のアンプでは増幅素子が飽和かカットオフすることで、それ以上の増加はしませんが、CR結合で直流的に状態が保持されない回路では、CRの時定数で発振します。

上記の様に直線的な変化の状態になるのは、 初段ゲインが25で、終段ゲインが4の時だけで、 初段ゲインが25より小さいか、終段ゲインが4より大きい場合には増加が頭打ちになります。
下図はの終段ゲインを5にした場合のデータをグラフ化したものです。
赤色の線がVo、紫色の線が-V1、青色の線がeの値です。

入力電圧 Vin 1
初段ゲイン A 25
終段ゲイン G 5
歪電圧 D 0
初段帰還率α 0.05
終段帰還率β 0.0025

初段ゲインが25より大きいか、終段ゲインが4より小さい場合には扇状に増加します。
下図はの 終段ゲインを3にした場合のデータをグラフ化したものです。

入力電圧 Vin 1
初段ゲイン A 25
終段ゲイン G 3
歪電圧 D 0
初段帰還率α 0.05
終段帰還率β 0.0025

 

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