また戯れに無益な製作を トランジスタ技術2008年3月号別冊付録D級パワーアンプに
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D級アンプと真空管とトランスのコラボレートから、どんな音の世界が広がるだろう、
そんな夢を叶えてくれる密かな自分だけの冒険旅行の切符を手に入れました。
IRS2092を使用したD級パワーアンプ
上の写真はトランジスタ技術2008年3月号別冊付録に
付いていた基板に、協賛のマルツパーツ館から購入した数量限定パーツセットで製作したD級パワーアンプです。
アンプの
回路は、主要部品であるD級アンプ駆動IC IRS2092のアプリケーションに準じたものとなっています。
今回のアンプの製作では、このパーツセットに入っている普通には入手し難いであろう半導体類を利用させていただきました。
真空管とトランスによるフロントエンド
ホットな球を
クールなD級アンプにトランスでジョイントした、
スーパーエクセレントなオーディオサイボーグ『D球アンプ』の誕生。
全回路図(2008/4/29 最終版)
アンプ回路 |
電源回路 |
真空管はカソードフォロワ回路で高入力インピーダンスのバッファとして動作します。
三極管の特性によって信号電圧に第2高調波成分を加えます。
トランスはその特性によって音声帯域の信号成分だけを選択します。
またD級アンプのバスパンピング対策として、ステレオのLchをトランスの接続によって位相反転して、D級アンプのLchとRchを逆相駆動しました。
信号成分をトランス結合しているために、LchとRchのコモンモードラインが絶たれてアースラインのループができないので、それに伴うノイズがありません。
真空管のプレート電流が定常範囲に達した時点でシャットダウン(CSD)を解除するので、電源を入れてから音が出るまで15秒位のタイムラグがあ
ります。
μPC2412Aは低ドロップ電圧12V出力の3端子レギュレータで、真空管のヒーターとアンプ基板のVccを賄います。
IRS2029はC-MOS ICなので信号入力端子(3番ピン)は高入力インピーダンスです。そこでDC負帰還とAC負帰還を分けたデュオベータ回路にしてみました。
DC分は高抵抗による全負帰還で、DCゲインは1であるため、出力DCオフセット電圧は入力DCオフセット電圧に等しくなります。
ACの信号分に対しては音のいいといわれる小容量のフィルムコンデンサをカップリングコンデンサに使用してます。
1/4W抵抗は金属皮膜抵抗を使用、コンデンサは発振回路と出力ローパスフィルタにPPSコンデンサを使用、
ハイサイドゲートドライバ電源のチャージポンプ回路の電解コンデンサには低インピーダンス品を使用しました。
スイッチング周波数は、抵抗(トランジスタ技術2008年3月号別冊付録回路図のR4+VR1)の抵抗値を大きくするほど周波数が高くなり、この抵抗を取り外すと800kHz位とな
ります。
LchとRchのスイッチング周波数のビートがオーディオ帯域に入らないように、LchとRchのスイッチング周波数の差を25kHz以上離す必要があるが、
抵抗とスイッチング周波数の関係は、ICによる個体差(内部ツェナー電圧の違いなど)があるためにまちまちで、周波数カウンターで確認する必要があります。
このアンプのスイッチング周波数はLch:595kHz Rch:525kHzとなっています。
出力ローパスフィルタ
4次バターワース特性ローパスフィルタを、
遮断周波数fc=50kHz、負荷抵抗RL=8Ωで設計しました。
計算式 L1=1.530734RL/2πfc, C1=1.577161/2πfcRL L2=1.082392RL/2πfc, C2=0.382683/2πfcRL |
結果 L1=39μH, C1=0.62μF L2=28μH, C2=0.15μF |
シミュレーションしたローパスフィルタの特性 |
以下はRchのデータです。
入出力間の周波数特性
VOL=Max 0dB=1W(RL=8Ω)
10kHz方形波(8Ω負荷)
上:入力(0.1V/div)下:出力(1V/div)
出力0.1W (THD=0.2%) |
出力10W (THD=0.6%) |
ご覧の通り歪の主成分は、真空管が発生する第二高調波。
無信号時の出力電圧波形
入力:ショート 出力:8Ω
縦軸:20mV 横軸:0.2μS
ACミリボルトメータによるノイズ電圧:2mV(ノンフィルタ), 0.16mV(Aフィルタ)
キャリア成分は500kHz位でその振幅は10mVp-pだが、70MHz位で最大100mVp-p程度のリンギング成分がスイッチング時に発生している。
ラジオへの影響はアンプに近い場所で、AMとFMの両方とも受信できなくなる周波数帯がある。
スイッチング周波数を高くすれば、キャリア成分は出力ローパスフィルタでより小さく減衰するが、リンギング成分の方の密度が高くなるから悩ましい。
アンプ基板
この基板では3端子レギュレータが載っているが現在の基板には無く、Vccはヒーター電源から得ています。
基板の大電流部分には配線インダクタンスを軽減するために平編銅線を使用し
ました。
配線の交差する部分にはテフロンチューブやテフロンテープを使っています。
内部の様子はこんな具合です。
フロントパネルは真空管が見えるように窓をくり貫いた、木目の美しい槐の端板で、オイル仕上げしました。
ケースはリードのP-12 (W)250mm×(H)60mm×(D)150mm
ケースをダイノックシートのレザー調(LE-703)でお色直し。
ヘヴィメタルの鑑賞に堪え得るアンプだ。
Evolve power amplifiers |