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ファインメット出力トランス で

18GV8 シングル 2W+2Wの
パワーアンプを設計製作

 

<FM-6WS><18GV8><ケース><基板><回路><外観><特性><最後に>

ノグチトランスから発売されたばかりのファインメットコア出力トランスを自分の耳で評価するために、色づけの少ないハイブリッド回路でシングルパワーアンプを製作しました。

FM-6WS

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先人が憧れたパーマロイをも凌駕する新世紀の磁性体ファインメット、低磁心損失、低磁歪 、量より質の極でしょうか、同社EIコアPMF-6Wと同サイズの小さいバンドケースの中身がダブルカットコアなんて信じられない造りです。

FM-6WSの写真と実測した特性

 

定格では6Wですが低域では20Hzともなると波形の崩れない出力は1Wでも無理なため、最大出力2W程度のデスクトップサイズを計画します。

出力の大きさから6BM8クラスの出力管が適当ですが、5極管のプレート電流はスクリーングリッド電源のリップル等の電圧変動を受けるため、良質なスクリーングリッド電源の確保が肝となります。
そこで6BM8と同クラスでありながら、より低いスクリーングリッド電圧で動作する18GV8を採用して、3極部をスクリーングリッド電源の電圧レギュレータとして使うことにしました。
そのついでに電圧レギュレータの基準電圧を信号電圧にして、スクリーングリッドとコントロールグリッドを等信号電圧振幅でドライブすることにします。
これはスクリーングリッドとコントロールグリッドを接続した3極管接続ですが、スクリーングリッドがコントロールグリッドからは等信号電圧振幅のプレートに見えるためにフィードフォワード・カスコード・ブートストラップ回路を形成して歪の少ない増幅が行われます。
スクリーングリッドをプレートと接続する3極管接続では内部抵抗が低くなりますが、スクリーングリッドとコントロールグリッドを接続した3極管接続では逆に内部抵抗が非常に高くなるために、プレート電源電圧の変動に対するプレート電流の変化が殆んど無くなります。

18GV8

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30年位昔は地方の電気屋の裏手に修理不能なテレビが野積の雨ざらしになっていました。今のテレビと違って背面の板が簡単に外せたので中の真空管を引き抜くことは誰にも容易でしたから、物の価値の判らない愚か者の手に掛かる前に回収 することを私はその時に使命と感じていました。ま、そういう気持ちだけでなく、家のテレビを修理を試みるつもりでちょっと失敬してきたというのもあります。
そうした思い出が詰まったタイムカプセルのような蜜柑箱の中から、今この時のために18GV8を取り出だしました。

真空管に限らず電子部品の変遷はめまぐるしく、今まさにテレビはブラウン管から薄型へ代わり、真空管回路に利用できそうな高耐圧トランジスタの生産が打切られ、ブラウン管テレビの廃却品を部品取り用に物色する時代へと入りつつあ ります。

最新技術で生まれたファインメットコアの出力トランスと、廃棄物扱いの真空管の組み合わせでアンプを造ったら嘸や痛快だろう。いや、そうしたアンプを造れるのは今しかないのだという切迫感 に駆り立てられました。

手持ちの 18GV8はこの3本、ボケとか☓とかは多分テレビに差し替えて垂直振幅で判断した時のものです。

     

これと同じようにG2をプレートに接続して、G1電圧0VのVp-Ip特性を観測。
縦軸はプレート電流(Ip:20mA/div), 横軸はプレート電圧(Vp::20V/div)

カーブの傾きが立っているほどgmが高く新鮮な証拠。カーブの傾きが示す老化度とゲッタの色とが一致しています。

実験回路

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定電流回路でプレートのバイアス電流を固定し、DC帰還でプレート電圧を0V中心に動作するようにしているので、無調整で真空管の差し替えができます。

18GV8 5極部のプレート電流を35mAにする調整はHZ6Lの選別で行いました。
2SC3840のエミッタ抵抗330Ωを調整すると歪率の下がるポイントがあります。
各電源の電圧を整流ダイオードと直列に抵抗を入れて調整しました。

3本在るどの18GV8を使用しても、最大出力は1kHzで2W以上、ひずみ率は1W 1kHzで0.01%以下、ノイズは50μV以下の性能が得られました。
これでもうエミ減の中古管も捨てられなくなりました。

電源トランス

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毎度お世話になっているフェニックスに、注文から一週間、小熊の宅配便で荷物が届き、 梱包を解くとまだワニスの匂いも鮮やかな可愛いRコアトランスがダンボール函の中で丸く蹲っていました。
添付されている負荷試験成績書で注文書通りかを確認し、配線ミスの未然防止にリード線のホットとコールドをより合せ、偶々暇があったのでパソコンでラベルを作成して貼り付け ました。

ケース

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ケースのデザインはボール紙で原寸大模型を作って検討しました。
ファインメットのメットから兜や甲冑を連想して、最初は立方体に近い形状でしたが、トランスが密集することによる磁気結合が懸念されたので、各トランスの中心軸を合わせて磁気結合を回避するトランス直列配置 とするため横長スタイルに変更しました。
 

<被視認性向上 FACEデザイン> 人間の脳は、目や口など「顔」のパターンに高い反応を示す。これを利用してアンプの前面を顔に似せ、より発見されやすいデザインとした。

ケースの製作

市販品に適当なのが無かったので、ホーザンの板金折り曲げ機を使って、1mmアルミ板でタカチのMBケースタイプを真似したメーカー製風手作りケースです。
サイズは31cm×11cm×6cm

基板

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RSコンポーネンツで扱っている2.54mmピッチ銅箔なし穴あき基板を使いました。

上の基板は部品配置を左右逆に作ってしまって作り直した経緯があります。

組み込んで通電テストに至ってからミスのあることが判明、HZ6Lと2SC3840の取り付け方向が逆でした。

回路

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アンプ回路 (片チャンネル)

電源回路 (両チャンネル共通)

外観

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塗装にはニッペのアルミ素材への密着力抜群アルミカラースプレーを使いました。表ケース:ステンカラーメタリック 、裏ケース:ブラウンメタリック の配色にしました。
アルミ建材によくある色でアンプのような調度品にはどうかなと思いましたが、室内に置くとシックで割りといい色合いです。

真空管の脱落防止金具は0.8mm径ステンレスバネ線を用いた手製です。
ステンレスバネ線は長さ300mm 20本 透明チューブ入りでホームセンターに売ってました。

下図のような簡単な作りです。

  1. 先ず線の長さのおよそ真ん中から2つ折りします。
  2. 折り曲げた先端から7〜8mmの位置をラジオペンチで直角に曲げます。
  3. 更にその位置から18〜19mmの位置を直角に曲げます。
  4. 現物にあてがいフィットするように曲がりを修正します。
  5. ソケットの高さやシャーシの板厚を考慮した適当な長さ+5mmで切断します。切り方はラジオペンチの刃で少し傷をつけてそこを折り曲げればポッキリいきます。
  6. 足先を5mm位曲げて、この曲げ角度で左右のテンションのバランスを整えます。
  7. 何個か作った中から選んで出来のいいものを使います。

真空管がシャーシ上に露出している構造なら真空管がソケットから浮いていないかは簡単に点検できますが、このアンプのように真空管をケース内に収めた場合には特に、何かの弾みで真空管がソケットから抜けることを防ぐために、このような脱落防止金具を装着して置くと安心です。

真空管脱落防止金具といえども、ワイヤーアート感覚で後光とか稲妻とか放電リングとかおしゃれなデザインにして売れば、いい小遣い稼ぎになるかも。

特性

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部屋の暖房に使えるほどの発熱はないですが、手元に置けば指先位は温められます。

ノイズが少ないです。入力ショート:70μV 聴感補正フィルタJIS(A)入:22μV
試作時よりも増えた原因はステレオになって電源の消費電流が倍になったからと思われます。

出力トランスの2次側からの帰還がないためDF(ON-OFF法:8.9)が低く、低域が膨らむ感があります。

周波数特性

歪率特性

10kHz方形波 2Vp-p

8Ω負荷

出力オープン

何処に

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我はゆく

骸と化しても

自作ジエンドにしようかと思ったけどまだ続けます。自作は永遠に不滅です。

最終更新  2006/03/28

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