6V6高帰還パラシングルアンプ

 


1. 狙い


6350直結ハイゲインドライブ段と終段プレートからマルチ負帰還により、オールオーバで高NFBでありながらを安定した動作の高性能なシングルアンプを作る。


2. 設計の要点


初段は内部インピーダンスの低い6350を使い、ゲインを稼ぐために2段構成とし、低域の時定数を減らすよう直結アンプとする。ドライブ段は200kHz帯域で約46dBのゲインを稼ぐ。出力段のプレートからはPG及び2段目のカソードに帰還を掛けオープンループの特性を整えると共に、低歪ドライブとする。
ゲイン設定は1Vrmsでほぼフルパワーとなるよう仕上がりゲインを14dBとして、OPTの暴れが120,170kHz辺りにあることから、クローズドループの高域限界を50kHzあたりになるように一次側からの帰還量を決める。その上でクローズドループゲインを2次側からの帰還抵抗で決定し、微分補償でオーバーシュートを抑える。

3. 回路(図の出力段はシングル)


4. 主要特性


1. 周波数特性 15〜60kHz(−3dB)低域は初段のフィルターによる。
2. ゲイン 14dB(約5倍 NFB 26dB)
3. 出力  5.3W(8Ω負荷クリップ)
4. 歪率  0.02%(1kHz 1W)0.6%(1kHz5W)
5. ノイズ 0.2mV(Lch)0.3mV(Rch)
6. DF   20以上


5. 特性図


本回路のボーデ線図は図のようになっている。C6,C7,C9,C11、R11が帰還回路で無帰還の場合が下図のボーデ線図のNFなしのゲイン。これにC6、C11(C9はゲイン補正)によるPG帰還を掛けると一次帰還のみのゲイン線図になる。これにR11(C7は補正)のオーバーオール帰還を掛けたものが最終ゲインで中低域では約32dBの高帰還となっている。
 帰還アンプのポイントは最終ゲインのクローズドカットオフ周波数(この場合は約50KHz)あたりで、この時に位相余裕が充分である必要が有る。そのためには帰還前のスロープが−6dB/oct(つまり位相回転が−90度)になっていることが必要で、このために一次側からの帰還をかけている。実際はトランスの位相回転がそれにプラスされるので、現在の位相余裕は60度ぐらいであるが、負荷に0.22μFのみにしても若干のリンギングが見られるだけと至極安定な動作をしている。


 矩形波応答  10kHz8Ω負荷        

 負荷安定度  負荷0.22μFのみ