(454)05/22_17:06
Re: スピーカの等価回路と動作について (raraki)
この話は、電気-機械-音響混在系である動電スピーカのモデリング
の基本的な部分ですが、大変混乱しがちな部分でもありますので、
少し長くなりますがコメントさせていただきます。
> よってLは質量、Cはダンパーのコンプライアンスに対応しています。
>fs付近の機械インピーダンスによって発生するボイスコイルの電気的な
>振る舞いを、電気的な等価回路に変換したものですね。
話の発端となっている石川さんの示した等価回路の場合には、
電気系-機械系の対応関係が異なっています。
機械系を集中定数系とみなし、電気的等価回路に置き換えて
解析する場合、「力を電圧に置き換える機械系の等価回路」
の作法では、
L: 質量
C: スティフネス
R: 機械的粘性抵抗
という対応関係を使います。
この型式では、動電スピーカの機械系低域特性を単純化した
モデル(=質量-バネ-ダンパ系)に相当する等価回路は
V→
+−−L−−C−−R−−+
| |
電圧源 |
| |
+−−−−−−−−−−−+
(等倍フォントでないとずれるかも)
のように直列接続です。このモデリングでは、電圧源の
電圧が振動系に加わる「力」に対応し、またCに蓄積さ
れる電荷が変位に対応します。
#とりあえず機械的要素がどのように置き換え可能かを
#示すため、ボイスコイルの電気的要素は含めていません。
この等価回路と現実のアンプ-スピーカの対応を考えてみると、
現実のアンプ-スピーカでは、F=Bli (F, 力; B, ギャップ磁束
密度; l, ボイスコイル長; i, アンプの出力電流)の関係がある
ため、上記の等価回路で示されているV(このVは、等価回路での
仮想的な電圧=力)は、V=Bli(このiは現実のアンプ出力電流)と
いうことになります。
#実際のアンプ出力電圧・出力電流と、等価回路での仮想的な
#電圧・電流が一対一に対応しないので、混乱しないようご注
#意下さい。
これに対して、話の発端になっている
http://homepage3.nifty.com/y-daisan/html/SPEAKER.jpg
は、力を電流に対応させるとともに、スピーカの入力端子から
みた「スピーカの電気的インピーダンス」を模擬する等価回路です。
この等価回路の場合、
力 :等価回路の回路電流
R (8 Ω): ボイスコイルのDCR
R+L (100 Ω+400 μH): ボイスコイルの高域インピーダンス
(渦電流損失により純粋なLとはならない)
C (222 μF): 振動系等価質量
L (71.3 mH): 支持系コンプライアンス
R (53.7 Ω): 支持系機械的粘性抵抗
にそれぞれ対応します(力を電圧で置き換えた場合とは
C, Lの役割が逆転することに注意)。
この等価回路の場合は、力が電流、速度がLCR並列共振回路
の端子電位差に対応し、スピーカの電気的インピーダンス
特性を比較的うまく表現してくれるので便利ですが、実際
のアンプ出力電流と完全に一対一で対応させるには、上記
のR, R+L(ボイスコイルの電気的特性)と LCR(支持系・振動
系の機械的特性に対応する電気的素子)の間にBl積:1の巻き
線比を持つ理想トランスを挿入し、F=Bliの関係を考慮して
やらねばなりません。
音圧が何に対応するかといえば、直接放射型スピーカの
十分に遠点での軸上音圧は振動板の加速度に比例し、また
上記のように振動系速度はLCR端子間電位差に対応すると
いうことから、音圧はLCR端子間電位差の時間微分に対応
ということになりますね。
なお、半無限空間(無限平面バッフル)に対する音響(放射)
インピーダンスは、大略10 Hzから10 kHz程度まではほぼ
純粋な質量負荷とみなせ、音響(放射)インピーダンスも
等価回路に含めるならば上記のLCR並列共振回路と並列に
接続される小容量のキャパシタということになりますが、
簡便なモデリングでは無視してしまうか、あるいは振動系
等価質量に対応するCに含めてしまい、air-massを含めた
振動系等価質量として考えることもしばしばです。
さらにキャビネットを等価回路に含めようとすると、平面
バフルもしくは密閉以外では少々複雑になりますし、密閉
の場合もキャビネット内部での音響的反射の影響がインピ
ーダンスの中域に現われ、かなりややこしいことになります。
#http://homepage3.nifty.com/y-daisan/html/A40515.html
#で観察されたインピーダンスの変化は、振動板前方の空間が
#有限となることおよび音響反射による影響で、ドライバを
#キャビに入れることによるfs近辺の特性変化・吸音材を入
#れないキャビで比較的明瞭にみられる中域でのインピー
#ダンスの乱れなどと基本的には同様な現象です。オカルト
#の要素はありません:)
個人的には、現実にある程度即したアンプの負荷としてシミ
ュレーション・計測を試みてみるなら、フルレンジもしくは
パッシブネットワークが介在しないマルチアンプ駆動に限られ、
またキャビの影響は含まれないものの、スピーカの入力端子
から見た電気的特性をシンプルながら比較的よく表現できる
http://homepage3.nifty.com/y-daisan/html/SPEAKER.jpg
のモデリングから始めるのが妥当かな、と思います。ボイス
コイルDCRと高域インピーダンスの後に、Bl積:1に相当する
巻き線比のトランスを挿入して、電気磁気的要素と機械的要素
の関係をより忠実に表現できるシミュレーションを行なうこと
もできますが、とりあえずやってみたいのは、わりと現実に
即した負荷を使ってアンプ動作の解析をしたい、ということだと
思いますので御示しになった等価回路で構わないでしょう。
T/Sパラメータが公表されているドライバであればそれぞれ
相当する定数を求めることもできますので、ご希望があれば
少し整理してみますが、とりあえずはお手持ちのスピーカの
インピーダンスf特を実測してそれとわりにうまく合う定数を
使ってみるということでよいかと。
(455)05/22_18:15
rarakiさん、ありがとうございます (UTiCd)
だいぶ混乱していましたね…。以後気をつけますm(__)m
あと、出力音圧の低域ローカット特性は、理論的には電気的な
2次ローカットフィルタと等価である、ということも改めて書いて
おきます。
電圧駆動なり電流駆動なりで変化するQは2次ローカット特性の
Qということです。電気系からみた場合のモデリングには関係ない
ですけど。
(456)05/24_00:14
負帰還ありとなし (kimura99)
石川さん、
木村と申します。ホームページ拝見しました。
気になるところがありましたので報告します。
”スピーカー負荷のNFBアンプの制動特性”のところで
負帰還ありとなしのグラフを載せていますが、
差を表現するには、アンプの部分を理想アンプから
周波数特性等を含んだものにした方がよさそうです。
電流のグラフを見ると、二つの電流比は任意の時刻で
3.2になっているはずです。理由は、負帰還タイプの
等価回路は、ゲイン4.16の理想アンプに
0.63オームを直列につけたのものに相当する一方、
負帰還なしは、同様にゲイン4.16に2オームが
接続されているためです。
ゲイン=8.92/(1+100*8.92/(100+680))=4.16
出力インピーダンス=4.44*(8.92*100/(100+680)-1)=0.63
木村@仙台
(458)05/24_16:58
そろそろスレッドを変えましょうか (タムさんす)
皆さん、いろいろとありがとうございます。
無限大バッフルとフルレンジなら、石川さんのモデルで良い、として良いですか?
また、空間に出て行く部分はLC共振回路の両端をモニタすれば大体近い波形が出ていると思ってよさそうですね。
この件をまとめて、とりあえずのシュミレーションに持っていきたいですね。
以上宜しくお願いします。
(459)05/24_19:45
純抵抗よりはだいぶましなシミュレーション (raraki)
> 無限大バッフルとフルレンジなら、石川さんのモデルで良い、として良いですか?
あくまでスピーカの動作が線形とみなせる範囲でのみ・純
抵抗負荷よりは現実に近い条件の元で、アンプ動作・アン
プの諸特性が変わったときの影響を相対的に観察することは
できるでしょう。
スピーカ側の抱える諸々の非線形要素・時間的に変動する
要素の影響については、音圧特性への影響はもちろんの
こと、それらの要素がアンプの挙動に与える影響についても
まったくわかりません。
> また、空間に出て行く部分はLC共振回路の両端をモニタすれば大体
> 近い波形が出ていると思ってよさそうですね。
いや、ここは、あくまで理想条件の下ではこうなるという
話で、現実はそう簡単な話ではありません。
まったく分割振動しない剛体の円板を無限平面バッフルに
取り付け、これを完全に線形な駆動系・支持系で駆動した
ときの十分に遠点での軸上で計測した時間軸波形・周波数
特性はシミュレートできますが、それ以上のことはわかり
ません。
ちなみに、この等価回路を電圧源で駆動すると、音圧に
対応するパラメータのf特は高域でだらさがりになります。
電流源で駆動すれば、LCR並列共振によるインピーダンス
上昇のため共振周波数近辺での端子電圧ff特の盛り上がり
がそのまま現われ、また高域は平坦なf特となります。
現実の電圧出力アンプとフルレンジスピーカでは「なん
となく」平坦なf特となるわけですが、これは分割振動
その他を利用して電圧駆動時になんとなくフラットになる
よう設計されているからです。
なお、分割振動を伴いまたコーンの窪み効果その他の修飾
因子が存在するようなケースでのインピーダンス特性・出力
音圧特性について、有限要素法により電気磁気系・機械系
・音響系のすべての要素を含めた連成解析が試みられてい
ますが、ようやく次の文献で示された図6のような結果が
得られたという段階です。
インピーダンスf特はなかなか忠実なシミュレーションが
出来ていますが、音圧f特については、あくまで線形な駆動
系・支持系、線形な音響(放射)インピーダンスを仮定した
シミュレーションであるため、恐らくは聴感上影響が大きい
と考えられるピーク・ディップについてはあまりうまく
再現できていません。
http://www.uni-erlangen.de/docs/FAU/fakultaet/techfak/www.lse.e-technik.uni-erlangen.de/e/images/acustica99.pdf
また駆動系・支持系の非線形要素・時間的に変動する要素
については、非線形なばね要素、機械的抵抗要素、分割
振動その他に起因する等価質量の変化を表現する非線形
微分方程式・非線形状態空間モデルに基づいた検討が行
われていますが、最低共振周波数近辺の挙動を除いては
まだこれからの課題ですね。
いずれのモデリングでも、本格的な有限要素解析や非線形
動的システムのシミュレータが必要となり、Spice系の回路
シミュレータでは到底対応できません。
結局、スピーカの挙動の変化については、アンプの出力
インピーダンスが高くなればこの等価回路のインピーダンス
f特に相似な形でfs近辺と高域が持ち上がっていく、といっ
たことが相対的に見える程度でしょう。
それでも、純抵抗負荷による検討よりはずっとまし、
ということは、もちろん言えます。
(460)05/24_19:54
re:負帰還ありとなし (石川@八野)
木村@仙台様、ご質問ありがとうございます。
石川@八野です。
さて、内部抵抗がなければ、ご指摘のとおりですが、わかりやすくするために、私の回路図の一番上の抵抗負荷の回路をみますと、ゲイン8.92内部抵抗4.44Ω負荷抵抗8Ωがあるので、帰還抵抗680と100Ωにはこの4.44と8Ωで分圧された電圧が帰還されるので、少し状況が変わります。
外部から信号を入れて出力インピーダンスを測ると約2Ωでした。計算すれば、そうなるはずです。
基本的に、問題にしているのは、この内部抵抗が大きいということです。これが0ならば、何も問題はありません。
これでどうでしょうか?回答になっています?
(461)05/25_00:03
負帰還ありとなし (kimura99)
石川さん、
私の思い込みと計算ミスの重なりがあのようなものを書かせたようです。
失礼しました。電流の違いについはもう少し考えて見ます。
木村