(444)05/19_10:22
質量はLかC? (村田@熊本)
おはようございます。
機械系を電気系に置き換えて等価回路を描く時に、2通りのやり方があります。
力と電圧(速度と電流)を対応させる方法と、速度を電圧(力と電流)に対応させる
方法があります。質量は、前者ではLに、後者ではCに対応します。
音響工学では後者の方が良く用いられるようです。理由は何かあったようですが
忘れました。
では。
(445)05/20_12:03
もっと複雑になる様ですね (タムさんす)
田村です。
部品の質量や慣性も入れるともっと複雑になる様ですね。(空気の粘性なんてのもあったような・・)うーむ
只、石川さんのモデルでインピーダンスを見ると、大体今のスピーカーを代表しているように思います。最初はこんなところからスタートで良いかと思います。
ところで、放射抵抗にあたる部分は何処?・・・まあ、直流抵抗の8Ωは全く違うでしょうから、残りの2つの抵抗のどちらか(両方かも知れませんが)となるのでしょう。
SDの話からだいぶSPの深いほうに話が行ってます。この機会にこのモデルを使って、アンプの振る舞いと音に対する影響を見たいですね。
宜しくです。
(446)05/22_02:39
スピーカーの場合 (UTiCd)
ボイスコイルが速度比例の誘導起電力を発生するので、
速度と電圧が対応します。
よってLは質量、Cはダンパーのコンプライアンスに対応しています。
fs付近の機械インピーダンスによって発生するボイスコイルの電気的な
振る舞いを、電気的な等価回路に変換したものですね。
高域へのインピーダンス上昇は、当然ですがボイスコイルそのものの
電気的なL成分なので、機械インピーダンスに対応するものはありません。
逆に、fs付近のふるまいを電気的に記述したように、ボイスコイルの
電気的成分(R成分やL成分)を、機械インピーダンスで投下表現することも
できます。
fsでインピーダンスが上昇するのは速度比例の誘導起電力(逆起電力)が
発生するからです。これは駆動ボイスコイルそのものを利用した速度MFBに
他なりません。
電圧駆動したスピーカーは、速度MFBを利用して低域共振をダンピング
した動作状態にあるということです。
ラジオ技術では、外付けボイスコイルに起電力を発生させてそれを帰還
するMFBがよく紹介されていますが、ボイスコイルに発生する電圧を使う
のは全く同じです。基本的にはfs付近のQコントロールがメインの動作に
なります。
特に、駆動ボイスコイルそのものからブリッジ検出でMFB信号を作って
いるようなMFBの場合、原理的には、駆動アンプの出力インピーダンスを
変化させてQコントロールしているのと原理的には何も変わらないことに
なります。
(447)05/22_13:05
補足すると (UTiCd)
>SPが並列共振回路だけなら、低インピーダンスアンプの無信号でショートすると、
>尾は引かないはずです。
それは誤解です。ボイスコイルの直流抵抗(DCR)があるため、fsによる共振
回路のダンピングが完全に行われることは、決してありません。
アンプの出力インピーダンスを負にすれば並列共振回路のダンピングは
より有効にはたらきますが、トータルで負になると発振します。
日本ではあまり知られていないですが、fs付近の特性を現すパラメーターと
してT/S(ティール・スモール)パラメーターというのがあります。fsでの共振
先鋭度を示すパラメータはQes,Qms,Qtsと三つあります。Qtsが実際の先鋭度で
1/Qts=1/Qes+1/Qms (いわゆる調和平均)
です。
Qmsが機械系のみの共振先鋭度、fsを電気系モデルの並列共振であらわした
ときのLCRを使って表現するなら
Qms=R√(C/L)
ということになります。
Qesが電気系による共振先鋭度で、ボイスコイルに発生する誘導(逆)起電力
によるダンピング成分で、信号源抵抗(駆動アンプの出力インピーダンス)を
Rsとして、
Qes=(RDC+Rs)・√(k・Mms)/((BL)^2)
となります。kはダンパーによるばね定数、Mmsは振動系質量、BLはBL積です。
#BL積のBは磁束密度、Lはボイスコイル巻線の長さです。
BL積が大きい、つまり磁気回路が強力だと、Qesが小さくできる、すなわち
fs共振の程度を下げられます。
駆動アンプの出力インピーダンスが大きい=Rsの値が大きいと、Qesは値が
大きく=電磁制動の効きが悪くなる、というわけです。出力インピーダンスが
無限大になる電流駆動ではQes=∞となり全く働かなくなります。このとき、
1/Qes=0なので、Qtsの式から、Qts=Qmsとなるのが分かります。
ここも参考になるかと思います。
http://www1.odn.ne.jp/~cem76800/speaker/speaker16.htm
放射抵抗というか空気負荷は、共振回路のLCRそれぞれに含まれています。
例えば、空気の質量は、振動系質量Mmsに含まれ、並列共振回路ではL成分に
まぎれています。
(454)05/22_17:06
Re: スピーカの等価回路と動作について (raraki)
この話は、電気-機械-音響混在系である動電スピーカのモデリング
の基本的な部分ですが、大変混乱しがちな部分でもありますので、
少し長くなりますがコメントさせていただきます。
> よってLは質量、Cはダンパーのコンプライアンスに対応しています。
>fs付近の機械インピーダンスによって発生するボイスコイルの電気的な
>振る舞いを、電気的な等価回路に変換したものですね。
話の発端となっている石川さんの示した等価回路の場合には、
電気系-機械系の対応関係が異なっています。
機械系を集中定数系とみなし、電気的等価回路に置き換えて
解析する場合、「力を電圧に置き換える機械系の等価回路」
の作法では、
L: 質量
C: スティフネス
R: 機械的粘性抵抗
という対応関係を使います。
この型式では、動電スピーカの機械系低域特性を単純化した
モデル(=質量-バネ-ダンパ系)に相当する等価回路は
V→
+−−L−−C−−R−−+
| |
電圧源 |
| |
+−−−−−−−−−−−+
(等倍フォントでないとずれるかも)
のように直列接続です。このモデリングでは、電圧源の
電圧が振動系に加わる「力」に対応し、またCに蓄積さ
れる電荷が変位に対応します。
#とりあえず機械的要素がどのように置き換え可能かを
#示すため、ボイスコイルの電気的要素は含めていません。
この等価回路と現実のアンプ-スピーカの対応を考えてみると、
現実のアンプ-スピーカでは、F=Bli (F, 力; B, ギャップ磁束
密度; l, ボイスコイル長; i, アンプの出力電流)の関係がある
ため、上記の等価回路で示されているV(このVは、等価回路での
仮想的な電圧=力)は、V=Bli(このiは現実のアンプ出力電流)と
いうことになります。
#実際のアンプ出力電圧・出力電流と、等価回路での仮想的な
#電圧・電流が一対一に対応しないので、混乱しないようご注
#意下さい。
これに対して、話の発端になっている
http://homepage3.nifty.com/y-daisan/html/SPEAKER.jpg
は、力を電流に対応させるとともに、スピーカの入力端子から
みた「スピーカの電気的インピーダンス」を模擬する等価回路です。
この等価回路の場合、
力 :等価回路の回路電流
R (8 Ω): ボイスコイルのDCR
R+L (100 Ω+400 μH): ボイスコイルの高域インピーダンス
(渦電流損失により純粋なLとはならない)
C (222 μF): 振動系等価質量
L (71.3 mH): 支持系コンプライアンス
R (53.7 Ω): 支持系機械的粘性抵抗
にそれぞれ対応します(力を電圧で置き換えた場合とは
C, Lの役割が逆転することに注意)。
この等価回路の場合は、力が電流、速度がLCR並列共振回路
の端子電位差に対応し、スピーカの電気的インピーダンス
特性を比較的うまく表現してくれるので便利ですが、実際
のアンプ出力電流と完全に一対一で対応させるには、上記
のR, R+L(ボイスコイルの電気的特性)と LCR(支持系・振動
系の機械的特性に対応する電気的素子)の間にBl積:1の巻き
線比を持つ理想トランスを挿入し、F=Bliの関係を考慮して
やらねばなりません。
音圧が何に対応するかといえば、直接放射型スピーカの
十分に遠点での軸上音圧は振動板の加速度に比例し、また
上記のように振動系速度はLCR端子間電位差に対応すると
いうことから、音圧はLCR端子間電位差の時間微分に対応
ということになりますね。
なお、半無限空間(無限平面バッフル)に対する音響(放射)
インピーダンスは、大略10 Hzから10 kHz程度まではほぼ
純粋な質量負荷とみなせ、音響(放射)インピーダンスも
等価回路に含めるならば上記のLCR並列共振回路と並列に
接続される小容量のキャパシタということになりますが、
簡便なモデリングでは無視してしまうか、あるいは振動系
等価質量に対応するCに含めてしまい、air-massを含めた
振動系等価質量として考えることもしばしばです。
さらにキャビネットを等価回路に含めようとすると、平面
バフルもしくは密閉以外では少々複雑になりますし、密閉
の場合もキャビネット内部での音響的反射の影響がインピ
ーダンスの中域に現われ、かなりややこしいことになります。
#http://homepage3.nifty.com/y-daisan/html/A40515.html
#で観察されたインピーダンスの変化は、振動板前方の空間が
#有限となることおよび音響反射による影響で、ドライバを
#キャビに入れることによるfs近辺の特性変化・吸音材を入
#れないキャビで比較的明瞭にみられる中域でのインピー
#ダンスの乱れなどと基本的には同様な現象です。オカルト
#の要素はありません:)
個人的には、現実にある程度即したアンプの負荷としてシミ
ュレーション・計測を試みてみるなら、フルレンジもしくは
パッシブネットワークが介在しないマルチアンプ駆動に限られ、
またキャビの影響は含まれないものの、スピーカの入力端子
から見た電気的特性をシンプルながら比較的よく表現できる
http://homepage3.nifty.com/y-daisan/html/SPEAKER.jpg
のモデリングから始めるのが妥当かな、と思います。ボイス
コイルDCRと高域インピーダンスの後に、Bl積:1に相当する
巻き線比のトランスを挿入して、電気磁気的要素と機械的要素
の関係をより忠実に表現できるシミュレーションを行なうこと
もできますが、とりあえずやってみたいのは、わりと現実に
即した負荷を使ってアンプ動作の解析をしたい、ということだと
思いますので御示しになった等価回路で構わないでしょう。
T/Sパラメータが公表されているドライバであればそれぞれ
相当する定数を求めることもできますので、ご希望があれば
少し整理してみますが、とりあえずはお手持ちのスピーカの
インピーダンスf特を実測してそれとわりにうまく合う定数を
使ってみるということでよいかと。
(455)05/22_18:15
rarakiさん、ありがとうございます (UTiCd)
だいぶ混乱していましたね…。以後気をつけますm(__)m
あと、出力音圧の低域ローカット特性は、理論的には電気的な
2次ローカットフィルタと等価である、ということも改めて書いて
おきます。
電圧駆動なり電流駆動なりで変化するQは2次ローカット特性の
Qということです。電気系からみた場合のモデリングには関係ない
ですけど。
(456)05/24_00:14
負帰還ありとなし (kimura99)
石川さん、
木村と申します。ホームページ拝見しました。
気になるところがありましたので報告します。
”スピーカー負荷のNFBアンプの制動特性”のところで
負帰還ありとなしのグラフを載せていますが、
差を表現するには、アンプの部分を理想アンプから
周波数特性等を含んだものにした方がよさそうです。
電流のグラフを見ると、二つの電流比は任意の時刻で
3.2になっているはずです。理由は、負帰還タイプの
等価回路は、ゲイン4.16の理想アンプに
0.63オームを直列につけたのものに相当する一方、
負帰還なしは、同様にゲイン4.16に2オームが
接続されているためです。
ゲイン=8.92/(1+100*8.92/(100+680))=4.16
出力インピーダンス=4.44*(8.92*100/(100+680)-1)=0.63
木村@仙台