たまリントンとトラターボ

タマリントン試作機.JPG
タマリントンアンプ



1.たまリントン


 たまリントンは、真空管とトランジスタのダーリントン接続によるアンプで、1970年頃に、レコードプレーヤーに内蔵された50EH5シングルアンプを修理する目的で考えられたものです。

 第一図が基本回路で、これで真空管の代用をしました。

タマリン図1.jpg

 たまリントン接続では真空管のGmはトランジスタのhfe倍に、rpはhfe分の一に、Ppは、トランジスタのPcにまで拡大されます。μは元の値のままです。   
 この回路での最大出力は、出力トランスの一次側に発生する交流電圧の実効値Vpを二乗した値をインピーダンスZpで割ることで計算できます。第一図のような一段たまリントンでは、12AX7を使用しても増幅率は100が限度で、入力電圧が1Vrmsの場合、Vpは100Vrmsが限界です。従って最大出力はZpによって決まります。Zp=2KΩなら、出力は5W、必要なB電流Ibo=71mA、Zp=1KΩなら、出力は10W、Ibo=141mAとなります。また、必要なB電圧、Ebb=100Vrmsの最大値=141Vに、入力電圧が最大値の時のトランジスタの飽和電圧を加えた値になります。Zpを低くするほど出力は増加しますが、ダンピングファクターは低下します。この場合、12AX7を両ユニット並列にすることで改善されます。

タマリン図2.jpg

 第二図は、一段たまリントンの実用回路で、今回試作したものです。D1は温度補償と、トランジスタのVbeにより真空管のバイアスが深くなるのを防ぐためのものです。C3、R3は、過大入力によりトランジスタがカットオフした場合に出力トランスのインダクタンスにより、高圧パルスが発生し、トランジスタがショートするのを防ぐ目的と、高域でスピーカーのインピーダンスが上がるのを補正するも目的から追加しました。また、トランジスタのショートにより、出力トランスや電源部が焼損するのを防ぐために高圧ヒューズを追加してあります。このヒューズは左右チャンネル独立に設けないと音質を劣化する場合があります。二段増幅の場合は出力段のみに入れ、前段はヒューズを通らないようにして音質の劣化を防ぎます。また、トランジスタのHfeが高すぎる場合は真空管のIpが少ししか流せないので、カソード〜アース間に定電流回路を挿入して分流します。今回の実験回路には入っていません。 また、これは抵抗値が十分高ければ、抵抗で代用できます。

タマリン図3.jpg

 第三図はウルトラ・たまリントンです。真空管のプレートを出力トランスのULタップに接続する事で、タップが50%の位置にあれば、増幅率は二倍になり、その結果、同一入力電圧で得られる出力は4倍になります。ダンピングファクターは半分になりますが、真空管を並列にすることで解決できるので、得な方法です。

タマリン図4.jpg

 第四図のスーパーたまリントンは、二段増幅にしたもので、ゲイン不足によって最大出力が制限される問題を解消できます。6DJ8を使用した場合の例で、耐圧が高く、Pcも大きいが、hfeが10程度と比較的低いテレビ水平出力用のトランジスタが使用できます。この場合は、Zp、Vp、Iboは部品の最大定格以内であれば自由に設定できます。例として、Zp=2.5KΩで出力が6W欲しければ、VP=123Vrmsで、Vpの最大値が172V、Ibの最大値が172V÷2.5KΩ=69mAとなります。
VbはVpの最大値に50V程度を足して220V位必要です。正しく知りたい場合は6DJ8の負荷線から計算する必要があります。6DJ8のμが約30ですので、Vp=123Vを得るために必要な二段目のグリット入力電圧は、4〜5Vrms程度、一段目のグリッド入力電圧は約0.2Vrms程度です。従って一段目のカソードのパスコンを外しても、出力トランスの二次側からNFをかける余裕は十分あります。

タマリントン電源部.JPG
タマリントン電源部



2.トラターボアンプ


 第五図は、6BM8を使用したトランジスタ・ターボアンプです。この回路の特徴は、6BM8三結アンプの出力部の電流をパワートランジスターに分流して6W程度の出力を得ようというものです。これは、電動自転車の発想を応用したもので、6BM8三極部の出力をトランジスタでパワーアシストすることで、6BM8の音質を維持しながら大出力を得るものです。分流比はトランジスタに90%、真空管に10%です。
 この回路も分流比を変更することで、部品の定格が許す範囲でZp、Vbb、Iboを自由に設定でき、10W以上の大出力も可能です。

トラターボ.jpg



1998/11/23 Y.TANAKA