決まった (範囲内の) 回路のアンプしか組まない人がいます。また回路図があって電圧電流が指示されている場合に限り、そのアンプを組む人もいます。 恐らく、お金が掛ることだし、成功率を気にするからでしょう。 趣味のアマチュア・オーディオだから、自作アンプだから、それでいいとも言えるし、同時にそれだけなの?、とも言えるでしょう。
そういう私だって、カソードフォロワ直結やもっと怖いプレートフォロワ直結、二階建て直結アンプ等を、最初に動作させた時は、相当怖かったですが。 でも一週間、一月、一年と稼働すれば、何ということはないのですね。 そのように取り組んできたおかげで、C とか R とか配線材の取り替えだけがアンプの音色の調整技術だ、などという狭い考えに囚われることがなかったのは幸いでした。 自分にとって新しい球、新しい回路構成、これに挑戦するか否かが、次のステップに進むか進まないかの別れ道であり、先入観を排除するチャンスです。
次のステップや課題に進む場合、いろいろ先行事例の記事等を調べます。 その球を使って、その回路構成を採用している事例があれば、ひとまずコピーすることになりますが、そうではない場合はどうしましょうか。 その球の、先行事例の記事等が一切ない場合はどうしましょうか。 その球の規格表を参照し、とにかく簡単な基本回路で動作確認することになるでしょうね。 もっとも最近はズボラになって直接応用動作から始めてしまうことが多いのですが。 さらに、目的の回路構成の記事があればコピーして、または教科書の「抽象的」な例を勉強して、球の規格表に合わせて回路定数を設定・変更し、自力で回路構成して試作して見ます。 そうしなければ判らないからバンザイして諦めることになります。 諦めたらそこで一切は「オシマイ」です。
高価なシャーシ、高価な球、高価なトランス、高価な部品で組んでしまったアンプは手をつけたくないので、そのままソッとしておきたいものです。 しかしこれでは、結局新しい回路、新しい試みに挑戦する機会を逸していることになるのですね。 実験単価の低減は重要です。 そこで最初にバラック機を用意します。 外観にこだわらず、球や部品を次々と交換・転用して、多数のケースを逐次実験します。 実験が終ればそれを完成機に組み直しするつもりですが、しかし「予算の関係」から、組み直しよりも次の実験を優先することが多く、結局「完成バラック機」が溜まる一方です。 デモンストレーションの場には、美しく化粧した完成機ではなく、やっと納得した「試験機」や、「完成バラック機」を展示・演奏する場合がありますが、そうすると気の毒そうな、または不愉快な顔をする方が必ずいらっしゃいます。 出る音にまで、その印象が波及すると困るのですが、そのような方は催眠術が掛りやすいかもしれないから、本当に悪く評価するかもしれませんね。 その一方では、外観の貧弱さを無視して実験内容を評価して下さる方も必ずいらっしゃいますから、救われています。
要するに、外観だけを気にして寡作だったら、次々と新しいことはできず、腕は上がらないのですね
1999/08/23 宇多