楽器のおすすめ
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オーディオを趣味とするなら、楽器の生の音を聴いておくべきでしょう。
原音追求とかいわれたりしますが、原音とオーディオの音は明らかに違います。ボーカルを聞いても、ピアノを聞いても、花火の音を聞いても違います。また、どんなに安物のピアノやトランペットでも、オーディオと聞きまちがえることは、まずありません。(よくできたアナログシステムでは、たまに聞き間違えて、ドキッとすることありますが、デジタルではないようです)
原音は音の立ち上がりが違います。立ち上がりには複雑な音がまじりあっており、オーディオでは完全に再現できません。ジャズを聴く場合を例にすると、シンバルでは、スティックの木の音が最初に聞こえてから、シンバル全体が振動して音が出てくるまでにタイムラグがあります。また、耳で音を聞くだけでなく、顔とか体でも振動を感じます。スピーカーの音でも、顔や体で感じますが、どこか違うのです。
ウッドベースでは、弦をはじいた瞬間の小さなバチッという音がしてから、ボディ全体が震えて音を出すまでのタイムラグはそうとう長く、奏者が左手を絞ると音がさらに伸びていきます。この間の音の変化は複雑です。これでリズムのノリを出すので、きちんと再生されないと、ノリの悪いつまらない演奏に聞こえます。ピアノも、ハンマーが弦をたたく瞬間には、ピアノ線の金属の音が聞こえ、それからボディの共振による木の音が出てきます。デューク・エリントンやセロニアス・モンクはタッチがとても強く、音の立ち上がりでピアノ線がひずんだ音を出しています。それが奏者の個性とか独特の音色になっています。
オーディオに大金をかけるのなら、少しばかり予算を楽器にまわして、生の音に触れてみることをおすすめします。安上がりにというなら、ドラムのスティックだけ買いましょう。1000円ほどです。スティックには、オーク、ヒッコリー、メイプルと3種類の材質があり、これで机とか叩くだけでも、それぞれ音が違います。叩きかたでも音は変わるし、さらに興味がわけば、本格的に練習するのもよいでしょう。サックスでもギターでも、それぞれ音に発見があるし、楽器が鳴る鳴らないということも理解できると思います。安物の楽器や下手な人は、楽器がきちんと鳴らないのです。これがわかると、スピーカーが鳴る鳴らないというのもわかるようになり、オーディシステムをつめていくのにたいへん役立ちます。
1999/12/6 鳥沢