オーディオ・クラフト誌はどうなるのか

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オーディオ・クラフト誌は行き詰まっていると、かなり前からいわれています。たとえば、アンプの回路では、おおむね発表され尽くしているし、新回路はそうそう発表されるものではありません。だから、毎号々々、斬新な回路のアンプとか最新技術を記事に盛り込むことは、まずできないでしょう。一方、読者はオーディオを趣味としているのであり、最新技術の動向とか、新理論とは別のところで、個人的に楽しんでいるのが実状です。
また、オーディオ・クラフト誌には、毎号、読者受けしそうな、同じような記事が並びますが、これは読者あっての雑誌なので当然のことでもあります。300Bアンプの記事はこれまでにたくさん掲載されてきましたが、これからも掲載されていくことでしょう。いまや、300Bアンプは初心者に最適な入門アンプとなっており、初心者のために定期的に掲載されるわけです。新読者を開拓するためでもあるでしょう。
そうすると継続的な読者はどう思うか。皆さんすでに感じられているように、マンネリです。オーディオ・クラフト誌を1〜2年も購入すると飽きてしまい、買わなくなるでしょう。

オーディオ・クラフト誌のもうひとつの売りは、広告と「売りたし買いたし」の欄です。オーディオではビンテージが珍重されていて、ビンテージ広告はたくさん載っています。また、「売りたし買いたし」で欲しい物を安く買えたりできます。これも、オーディオを始めた頃には新鮮で、大いに役立ちますが、ベテランになるとたいていの部品は持っているし、本当の珍品や貴重品は広告に載っていないことが多く、ひいきの店からの情報とか人とのつながりの中で動いていきます(不動産も同じで、優良物件は広告に載らず、まずお得意様に話が持ち込まれる)。だいいち、広告とか「売りたし買いたし」が見たければ、立ち読みで十分です。
それに、最近のインターネットの普及をみると、広告や「売りたし買いたし」は、インターネットに取られそうです。インターネットなら、閲覧は無料であるし、最新情報を載せることもできます。世界を相手にほしい物を検索し、国内価格よりかなり安く、海外から通信販売で購入することもできます。

というわけで、オーディオ・クラフト誌は前途多難です。かつてのように、既製のラジオやアンプが高くて自作をするという時代ではなく、自作マニアが増えていくとも思えません。何もしなければ、徐々に発行部数が減っていくでしょう。月刊でなくとも、季刊や年に1回でもよいから、上級者向けの読み応えのあるものが出ればよいと思えますし、聴くだけのマニアと自作マニアの中間を狙った季刊誌「管球王国」も新しい動きとして興味をひかれます。

オーディオ・クラフト誌はマンネリから脱してほしい。

1999/09/26 鳥沢