良い音、悪い音、その弐
「最も金のかからない音質改善法」
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精神面の話を続けます。私にはこんな経験があります。
7年ほど前ですが、当時ブレスワークと言うワークショップに参加した時の話です。ブレスワークと言うのは瞑想方法の一つです。具体的な内容はどうでも良いのですが、聴覚に対しての効果は絶大でした。
私はそれまで自分のアンプは低域が出ないと信じていました。低域を出したい為にいろいろと工夫し、高価な部品を使い、いろいろと努力していました。それでも、満足した低域を聞いた事はありませんでした。ところが、ワークショップから帰って聞いてみると実はちゃんと出ていたのです。低域は満足の行く鳴り方をしていました。それどころか、今まで知らなかった良い所を沢山見つける事ができました。毎日聞いていたセットなのに気が付かなかった事が山ほどあったのです。嬉しかったのと同時にショックだったのを覚えています。
私は、回路がこうだから低域が出ないとか、××だから○○だとか、人から聞いた話でイメージを組み立てて、聞こえなくなっていたわけです。”ただ”聞く事がこれほど難しいとは、それまで考えてもいなかった事です。何の先入観も持たずに、ただ聞く事は本当は不可能かも知れないけれど、自分の判断はあてにならない事を知っておく事は大切と思います。
音を聞く能力ですが、誰もが十分に持っていると思って間違いないと思います。問題はそこから先で、判断は過去の記憶や知識を用いて行っています。その、基準は本当に正しいのでしょうか。知識を増やせば余計に先入観が増えるだけですし、かと言って、知識や経験がなければ対処のしようが無い。大きな矛盾を含んだ問題です。たぶん、これをどうにかする事は不可能でしょう。それではどうしたら良いのでしょう。
私は解決策を知りませんが、自分のセットを聞く場合も、他人のセットを聞く場合も同じ様に心がけている事があります。皆さんは、アンプを作った後最初にどんなポイントで評価をしますか。私は最初に新しいアンプの良い所を探します。他の人のアンプやセットでも同様に、良い所から探します。常にプラス思考で音を聞くようにしています。もし、貴方が悪い点から探し始めるようでしたら、変えてみましょう。それだけで、音質改善の可能性があります。
2000/05/28 田村