2000東京インターナショナルオーディオショーに行って
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インターナショナルオーディオショーが前都庁の跡地に建てた、大きな箱物集会場で開かれている。
前都庁の建物の寿命は短かった。私の中学時代に建物はできた。私はまだ生きている。
展示ブースは一昨年より昨年、昨年より今年と、狭くなっている。展示ブース料金が高いため、展示社は金に不足し支払えない為だろう。展示社の賞品を買う客が毎年毎年減っている為なんだろう。私は嬉しい気持ちになった。客が少ない事は買わない客の感性が健康なのであろうと。
ブースでは、スピーカーがスピーカーとスピーカーの箱、置台、床、天井、壁を鳴らして音を出していた。
うちにはスピーカーがいくつあるのだろうか。風呂湯沸かし器、洗濯機、電気釜、テレビ、ラジオ、ラジカセ、ウォークマン、ポケットラジオ、オーディオ装置、電話、ケイタイ電話、インターホン、オーブン、電子レンジ、その他、諸々。それらがスピーカーの音をしっかり出す。五月蝿い山の神に較べればたいしたことはないが、そうなるとスピーカーの親分のオーディオ装置などを大枚はたいて正常な感覚なら買う気はおこらないであろう。
私は休みの時は窓を開けて外の自然の音を聞いている。鳥の鳴き声、木梢と風の音、遠くの人の営みの音、休まります。何故、アンプ、スピーカーを作るかって?静を求めて作っている。
話を戻す。オーディオショーには自称オーディオ評論家というオーディオ文章売文家(原稿料が安い、注文が少ない為、この家業は生活が楽ではない)が機材説明員として講演しているが、実際は何をしているのだろう。
私はある業界で業界どっぷりの営業をしている。相手に物を買ってもらう為、手練手管の業を使うのであるが、その中で最も大切な事は物の購入の決定権を持たないが邪魔をする事のできる立場の人間の扱いである。この人間ひたすら煽てる事が一番のつきあい方である。
オーディオ売文家は物を買わないが雑誌等でそれとなくある機器を良くないと書くチャンスを持っている。オーディオショーのパンフレットの講演スケジュールを見ると、競合しているオーディオ業者各社が同じ売文家におしゃべりを依頼している。ある売文家は一日4〜5業者で講演し講演代と称するものをいただいている。ていのいい口封じである。このパンフレットからはオーディオ業者と売文家の口封じおだてシステムが見えてくる。購買者は蚊帳の外である。
毎年このショーは小さくなってくるのを見て、嬉しく思う。
オーディオの仲間は健全である。
2000/10/30 多賀 政信