ちゃんちゃらおかしくて

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みなさん、はじめまして。普段はniftyのFJAZZ MES18を本拠地にしているRudyと申します。

一体何がちゃんちゃらおかしいのか?以下、思いつくままに私が球アンプを組み立て始めてからこの2年半の間に体験したいくつかのことどもをご披露いたしましょう。

1 低容量カップリングコンデンサ

これは私が最初に組み立てた三栄無線の6BQ5SEアンプで体験したことですが、三栄無線に限らず多極管シングルアンプキット(当然NFBがかけてある)のカップリングコンは大体カットオフ周波数が10Hz近辺に設定されています。わが駄球アンプの場合0.047μFと次段のグリッド抵抗(470KΩ)で決まるカットオフ周波数は7.2Hzでした。これを0.22μF(カットオフ周波数1.5Hz)に替えることで低域の質感向上に多大な向上を見ることができます。理由は低域端までNFBがちゃんとかけられるようになって、その結果低域のダンピングファクタが改善されるせいです。それまでボンつき気味の低域がすっきりと締まってきました。目安として周波数特性がフラットになるのはカットオフ周波数の5倍からと考えると良いと思います。現代のソースやSPを使うなら「NFBループ内は最低でも10Hz 以上がフラット」が常識なんですね。

よく最初の球(多極管)アンプキットを作ってその音に感激した初心者の方たちの書き込みを読みますが、そのうれしさはとても良く分かるものの低域のダンピング不足の音を球アンプの音だと思ってるのかなといらぬことを考えたりします。

このことを三栄無線の店長さんにも話したのですが定数変更には否定的でした。送り出しと受け手のインピーダンスマッチングを考えてあるから云々とのことでしたが、一度試してみればいいのにねえ。

2 入門者用多極管シングルアンプ

1年半ほど前に直熱3極管の音に魅せられて以来、「アンプは直3」を旗印にやってきました。FJAZZ MES18を本拠地としている日本駄球協会にも直3部会がこの11月に創設されました。そもそもP-G-Fしかない3極管はシンプルの極みです。無帰還でも良い音だし。ハム退治が面倒ですが、なに、直流点火すれば良いだけの話です。300Bも良いですけど私は45が一番好きです。

初心者用のキットは近代球多極管(6BQ5, 6V6, 6CA7, 6L6, KT88など)のシングルアンプが多いのですが、どんな親心でそうしているのか疑問です。上の6BQ5SEアンプでさえ最初の音出しで感激して、それまで使っていた市販の重量級石アンプにはお引きとり願ったのですが、最初に直3アンプを作ってたらそのインパクトはもっとずっと大きかったでしょう。シンプルで音が良い直3アンプこそはじめてのアンプに最適なのじゃないでしょうか。供給量の多い300Bと2A3がお薦めですね。

3 部品を替えても音が変わらないって?

またFJAZZ MES18の話になりますが、ここには球アンプの理論的指導者たち、通称「真空管の天使たち」が数名いらっしゃいます。なかでもみなさんご存じのぺるけさんは代表的存在です。上の1のカップリングコンの容量変更もぺるけさんのアドバイスだったのでした。ぺるけさんといえば全段差動PPアンプですが、このアンプ、簡単に超3アンプにも変身できるんだそうです。

前置きが長くなりましたが、天使たちは例えばカップリングコンを替えてもSPコードを替えても音は変わらないと主張します。というかそういう些末な変化にかかずらわってはいけないと云うのが天使たちのいきかたなんですね。で、この理論家肌の真空管の天使たちと対極をなす集団も当然いるわけで、それが私が部会長を務める黒魔術部会の面々です。「そんなこと云ったって、変わるものは変わるじゃんよ〜〜〜」と叫ぶ人たちは自らを黒魔術に身を投じて、天使たちが忌み嫌う黒魔術な試みをいくつか発表・追試しております。

いくつかをあげると、ケミコンへの銅箔の張り付け、三菱ポスカ(緑)のCDとCDPピックアップレンズ端面への塗布、カーボンダイヤトニックの真空管の足への塗布、 BLACKGATE超電解接続、多極管シングルアンプのカップリングコンへのビタミンQの採用、などなど。最近ではSDの追試も行いました。天使たちも試してみればいいのにねえ。

ご参考までに、以前私がFJAZZ MES18で発表した黒魔術チャートをお目にかけましょう。

−−以下、過去ログから引用−−

黒魔術を体系的に集大成するという大いなる野望を突然抱いてしまいました。次のような層別はいかがなものでしょうか。(これ実は昔の本のパクリなんですけど)

      チャート1                チャート2
                 
        器用                    ケチ
        ↑                    ↑
怠け者 ←─┼─→ 小まめ    ムード派←─┼─→実質派
        ↓                    ↓
       不器用                 浪費家

例えば、今騒いでるポスカのCDPピックアップレンズへの塗布はチャート1の第1象限、2の第1象限(CH1-1, CH2-1)と位置づけできます。アンプへのBG投入はチャート2の第4象限(CH2-4)でしょう。カーボンダイアトニックならチャート1の第3か4象限(CH1-3,4)、2の第4象限(CH2-4)。駄球協会員の本拠地はチャート1の第1象限、2の同じく第1象限(CH1-1, CH2-1)ということですね。わたしゃ本来的にはチャート1の第3象限、チャート2の第1、4象限(CH1-3, CH2-1,4)あたりをうろついてます。

さらに問題点別に項目を分けることにします。

1. 音がうるさめである。
2. 音ににごりがある。
3. 音像定位をよくしたい。
4. 高音を出したい。
5. 低音を出したい。

など。これだとポスカは万能かなあ(爆)。BGもそうかなあ。銅箔はまず5.ですね。

以上を整理した例を示すと、

銅箔テープ:CH1-1, CH2-1, 5.
BG投入 :CH1-1, CH2-4, 1. 2. 3. 4. 5.

てなことになります。さて、みなさんはこのチャートを逆にたどってどこらへんの黒魔術をお望みでしょうか?教えていただくと、今後の活動のヒントになります。あと、これはここに分類できる、という魔術も教えて下さいませんか。それに項目別問題点の追加も、ね。

−−引用終わり−−

4 そんなにアンプが大事なの?

我々アンプ作りの楽しさを覚えたものはついついアンプ至上主義に陥りますが、立ち止まって良く考えるとアンプは単なる召使いであることに気がつきます。「SPは王様」理論の提唱者は何をかくそうこの私ですが(なに、そんな理論聞いたことがないって?)、アンプとは自分のSP(普及価格帯であろうと高級機種であろうと)をちゃんと鳴らしてなんぼのもんです。ここを間違えるとシステムが破綻します、というか安定してくれません。だってアンプはついつい作っちゃうので増えていきますが(爆)SPの買い物は10年に1度ぐらいでしょう(なかにはこれが逆転してるSP自作派もいらっしゃいますが)。もっとも私の現有SPは球アンプに最適な高能率型だったから買ったという面はありますけど。オーディオシステムのなかでのアンプは裏方的存在ですよね。CDPとアナログレコードプレーヤーシステムは女王様です。

5 大出力アンプ

日本駄球協会ミニワットアンプ部会の取り決めではミニワットアンプとは出力2W以下のアンプです。こんなアンプは自分で組み立てないと手に入りません。実際どのぐらいの出力が必要なのか?結論から云うとごく一般の木造モルタル住宅2階屋の6畳の畳間で公称能率98dB/W(この公称値には疑問を持ってますが)のSPを使っている私の場合、1Wもあれば98%のソースは十分です。ということは一般的な88dB/WのSPで10Wということになります。これで一戸建てでも近所迷惑な音量が手に入ります。

現在メインに使ってるパワーアンプ(227-227-245, 280のオール茄子管シングルアンプ)は消費電力が約90W(そのうちなんとフィラメント電源が45W超!)で出力1.5W。一部の超優秀録音盤の鋭い立ち上がりでビビるのがちょっと情けないですが、A級アンプを使っているなら100W以上の消費電力には二の足を踏みますよね。

世に売られている大出力アンプを活かすためには広いリスニングルームが必要なわけで、これじゃあ本末転倒ですよねえ。それともみんな大は小を兼ねると思ってるのでしょうか?

6 低歪率アンプ

無帰還直3シングルアンプを使っていると、で、そうしたアンプの歪率特性を測ってみると0.数%オーダーの歪率を云々することが、ほんと、ちゃんちゃらおかしくなってきます。特性的にははるかにこれを凌駕する球のPPアンプや市販の石アンプなんかと比べても音質的にはなんら引け目を感じませんもの。一時期、歪みの打ち消しが面白くていろいろいじったりしましたが、これって球を替えだけで歪率は0.数%ぐらい平気で変わっちゃいますからねえ。

一体音の良さを決めるものは何なのでしょうか?現在の私の考えでは、回路は順当なものを採用するとして、キーポイントは球の素性の良さと出力トランスだと一応結論づけています。超3や全段差動PPアンプは今後の課題です。でも満足のいくアンプを手に入れた今となってはこれらは「音の良い」アンプを作るというよりアンプ製作自体の楽しさを満喫するもののような気がしてます。

7 ソースの鮮度とは?

一度だまされたと思って土曜の午後9時からのNHKFMのセッション505という番組を聴いてみて下さい。スタジオ収録のジャズライブですがその鮮度の高さに圧倒されるでしょう。目をつむればそこはもうライブハウスです。多くの点で最新録音のCDの音さえちゃんちゃらおかしくなるほどです。FM放送のF特は大体50Hz〜15KHzと云われてますがこの番組を聴くといたずらにF特を伸ばすよりまえにもっとやらなきゃいけないことがあるんじゃないかと思えてきます。CDの高域再生限界20KHzさえ不足であるとの議論が出て久しいですが、鮮度とはF特でもダイナミックレンジでもないんじゃないかというのが最近の実感です。


以上、駄文につきあっていただいてありがとうございました。niftyのFJAZZ MES18(第18会議室)に何度か言及しましたが、ここは球アンプフリークの天国みたいなところです。ぜひ一度のぞいてみて下さい。最近は超3の話題も出てるし、日本駄球協会もあるし、そのいろんな部会もあるし。BMの会出身者はトラの穴出身者として敬意を持って見られてますよ。

では

Rudy こと 小林龍司
** MHH02171@nifty.ne.jp ** <99/11/28 14:02>