手作り技術士の遷り変わり

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私なりに、「手作り」について想うことを書いてみました。
特に、昔と、今の「差」を主題にしました。悪しからず。

・第一期手作り技術士

 (級ではありません。「期」です。誤解の無いように。)昭和20年代の方です。真空管の時代です。当時は、全て、「手」作りでした。これは、プロもアマも関係ありません。機械で、作成出来なかったので、人が、「手」で作成していました。対象は、「電気製品」から始まり、色々あります。
 ・ラヂオ、電気蓄音器(電蓄)等
  当然、完成品を販売していましたが高価でした。
  人手のため   数が出来ない。当然、高くなりますよネ。
  部品のため   これも高いのです。大量生産以前の状況です。

 ・技術
  「腕」のある「アマ」は沢山いました。
  プロとアマの違いは、「業」にしているかどうかです。
  「腕」と「目」に自信のあるアマは、「手作り」に走りました。
  部品は、「ジャンク」です。
  (本当のジャンクです。米軍放出品。半田の跡のある部品です。)
  
 ・アマチュア無線
  ラヂオと音楽の世界は、「商品」として「販売」されました。
  誰でも、楽しめる装置だからです。(本当は、ラヂオは必須品かな?)
  一方、アマ無線が、戦後、解禁になったのです。(私は戦前は不明)
  当時、無線機器は、本職用しかなかったのです。アマ用は無いのです。
  従って、「全員が、手作り」を始めました。これしか、方法が無いのです。

この時代の方々が、「第一期手作り技術士」と思います。テスタとハンダコテの、二つが、必需品でした。(皆さん、廻りの家の装置を修理した記憶はありませんか? 買う前に修理です。)

・第二期手作り技術士

 昭和40年代の方です。トランジスタへの対応技術が必要になりました。

 昭和30年代、SONYが、多分、世界で始めて、トランジスタ携帯ラジオを販売したのです。半導体の歩留りが悪く、メチャクチャ、高かった記憶があります。でも、真空管から、半導体への移行が始まったのです。当初のトランジスタは、小電力、低周波用しか出来ませんでした。

 暫くして、トランジスタが、部品市場に出始めたのです。が、トランジスタは、ハンダ付けを失敗すると、熱で破壊されるのです。高いトランジスタが、一瞬にして破壊です。このため、真空管とは違う技術が必要になったのです。

 ・組立キットの変化
  それまでは、真空管の組立キットで、全て、「配線」が必要だったのです。
  トランジスタが出現してからは、「基板」形式になったのです。
  面倒な配線作業が、基板への部品ハンダ付け作業と、大幅に簡略化されました。
  調整の難しい部分は、完成していて、組込むだけでした。

 ・機械化
  基板への部品ハンダ付け作業になり、機械化が進みました。
  プロの世界から、「手作り」が、撤退を始めたのです。
  (部品の大量生産と、機械による製造で、低価格路線を歩き始めました)

 このため、第二期手作り技術士には、「アマ」だけと思います。

 ・半導体の進出
  半導体の、大電力化、高周波化が進みました。
  またまた、SONYが、大出力オーディオアンプを販売したのです。
  球では無理だった、とんでもない出力を出したのです。
  音響の世界が「一変」しました。
  (でも、高かったなあ〜。ため息。)
  又、高周波化により、アマチュア無線が、「豹変」しました。
  144/420MHz等、簡単に作れる世界になったのです。
  一気に、「非」手作りによる、アマチュア無線へ突入しました。

 一期との差は、300-500Vで、感電したことの無い人、高周波火傷をしたことが無い人です。(ついでに、あの大きい電解コンデンサをパンクさせた経験の無い人???)

・第三期手作り技術士

 昭和60年代の方です。ICへの対応技術が必要になりました。
 ついに、第一期とは、全く違う世界へ突入したのです。

 ・端子のピッチ
  当初は、ピン配列が、10pin/inchでした。
  まだ、何とか、ハンダ付けが出来ました。
  が、半導体の高集積化により、これが、半分のピッチになりました。
  「手作り」ハンダ付けの世界から、遠い世界になりました。
  機械化の世界になりました。
  (ICヌクラーってありましたね!)

 ・ハンダ付け方法
  基板に穴を開け、部品のピンを通して、ハンダ付けまでは、対応できまし
た。
  が、ハンダ付け方法が、接着法へ変わったのです。激変です。
  これこそが、「第三期手作り技術士」の「わざ」です。
  (私も、パソコン改造で、必死に作業しました。もう、二度としません。)

 ・部品
  ICの脚が、24ピンにもなると、交換ではなく、脚を全部、ニッパで切る。
  旧品は、削除ですネ。
  吹けば飛ぶような、チップ抵抗。ルーペが無いと、読めない。

 世界は、IC化へ突入しました。色々な新しい技術が「実現」出来る様になりました。これらは、ICで実現出来るからです。大変な世界になりました。DAC/Dolby5.1/MP3等、新しい技術、方法がドンドンと発表されます。これには、第三期手作り技術士の「わざ」が必要です。(うらやましい。私は、手と目が対応出来ません。)(感電とは、縁の無い世界ですね。)

 そうそう、最近は、ROMにプログラムを書き込む必要がある機器があります。プログラム、ソフトウェアの技術も必要になっています。このような時代になっても、まだ、「手作り」技術士はいます。

追記
 パソコンにも、第一期、第二期、第三期とあると思います。
 スピーカはどうかな?
 昔、ユニットの組立キットがあった様な記憶も?

 以上、髭の長澤の、独断による感想です。
2001/03/03